この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
- Q破産管財人が否認権を行使すると、どのような効果が生じる?
- A
破産管財人が否認権を行使すると、相手方や転得者は対象の詐害行為や偏頗行為の効果を破産財団に対抗できなくなり、破産管財人は流出した財産を取り戻して換価処分できるようになります。
このページでは、否認権行使の効果について詳しく説明します。
- 否認権行使の効果:破産財団の原状回復の意味
- 否認権行使の効果の発生時期
- 否認権行使の相手方・転得者の権利

破産管財人の否認権とは
裁判所によって破産手続が開始されると、破産した人や法人(破産者)が破産手続開始時に有していた財産は(個人破産における自由財産を除いて)すべて「破産財団」として扱われ、破産管財人が管理処分権を持つことになります(破産法34条1項、78条1項)。
とは言え、破産手続開始前に、破産者が不正・不公平な行為をして、財産が破産者の手元から流出しているケースもあります。このような場合、破産管財人は、「否認権」を行使して、流出した財産を取り戻すことができます。
否認権とは、破産手続開始前になされた破産者の行為またはこれと同視できる第三者の行為の効力を否定して、破産財団の回復を図る形成権たる破産管財人の権能のことをいいます。
否認権を行使することによって、本来あるべき破産財団を形成して債権者に弁済や配当することが破産管財人の重要な役割です。
否認権行使の効果:破産財団の原状回復
破産法 第167条
- 第1項 否認権の行使は、破産財団を原状に復させる。
- 第2項 第160条第3項に規定する行為が否認された場合において、相手方は、当該行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害することを知らなかったときは、その現に受けている利益を償還すれば足りる。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人は、破産者がした債権者を害する行為(詐害行為)や特定の債権者にだけ利益を与える行為(偏頗行為)について否認権を行使できます。
破産管財人が否認権を行使すると、「破産財団を原状に復させる」効果が生じます(破産法167条1項)。否認権行使によって、破産財団を本来あるべき姿に戻すことができるのです。
具体的に言うと、詐害行為や偏頗行為の効果を否定し、それらの行為によって破産者の手元から流出した財産を破産財団に組み入れることができるようになります。
例えば、破産者が詐害行為によって所有不動産を第三者に譲渡してしまっていたとしても、否認権を行使することで、その不動産を第三者から取り戻し、破産財団に組み入れることができます。
否認権行使によって破産財団に組み入れられた財産は、破産管財人によって最終的に換価処分されることになります。
相手方は詐害行為や偏頗行為の効果を破産財団に対抗できない
破産管財人によって否認権が行使されると、対象となった詐害行為や偏頗行為の効果が破産財団に対して効果を失います。
そのため、詐害行為・偏頗行為の相手方は、詐害行為や偏頗行為によって財産を取得したことを破産財団・破産管財人に対抗できなくなります。
例えば、詐害行為に当たる贈与によって破産者から財産を取得した相手方は、否認権が行使されると、破産管財人に「贈与によって財産を取得した」とは言えなくなります。
相手方は受け取った財産を破産管財人に引き渡さなければならない
相手方は詐害行為や偏頗行為の効果を主張できなくなる結果、詐害行為や偏頗行為によって流出した財産は破産財団に属するものとして扱われ、破産管財人が管理処分権を有することになります。
そのため、破産管財人は、管理処分権に基づいて、相手方に財産の引渡しを求めることが可能となり、相手方は財産を引き渡さなければならなくなります。
破産管財人は取り戻した財産を換価処分できる
破産管財人が否認権を行使して、詐害行為や偏頗行為の相手方から取り戻した財産は、破産財団に属する財産です。そして、最終的には、破産管財人が取り戻した財産を換価処分します。
換価処分によって集まったお金は、手続費用に充てられ、残余があれば債権者に弁済または配当されます。
詐害行為否認の場合
破産者がした破産債権者を害する行為(詐害行為)を対象として否認権を行使することを「詐害行為否認(詐害否認)」といいます。
詐害行為について否認権が行使されると、詐害行為によって財産を取得した相手方(または転得者)は、破産財団に対して財産の取得を対抗できなくなります。つまり、詐害行為によって財産を取得したとは言えなくなるのです。
相手方は財産の取得を主張できないので、破産管財人は相手方から詐害行為によって取得した財産を取り戻し、最終的に換価処分することになります。
例えば、破産者が、破産債権者を害する意図で第三者に所有財産を贈与した場合、相手方は、贈与で財産の所有権を取得したとは主張できなくなります。破産管財人は、相手方から財産を取り戻し、換価処分します。
ただし、無償行為否認の場合には、相手方が、その無償行為の当時、支払停止や破産手続開始申立てがあったことを知らなかったときには、現存している利益分だけ償還すればよいものとされています(破産法167条2項)。
偏頗行為否認の場合
破産者がした特定の債権者にだけ利益を与える行為(偏頗行為)対象として否認権を行使することを「偏頗行為否認(偏頗否認)」といいます。
偏頗行為について否認権が行使されると、偏頗行為によって財産を取得した相手方(または転得者)は、偏頗行為による財産取得を対抗できず、破産管財人からの返還要求を拒むことができなくなるのです。
相手方は財産の取得を主張できないので、破産管財人は相手方から偏頗行為によって取得した財産を取り戻し、最終的に換価処分することになります。
例えば、破産者が、特定の債権者にだけ借金を返済(偏頗弁済)した場合、相手方は、借金の弁済としてお金を受け取ったことを主張できなくなります。破産管財人は、相手方からお金を取り戻し、破産財団に組み入れます。
なお、偏頗行為によって移転した財産が金銭である場合、現実に支払われた紙幣やコインを取り戻すわけではなく、価値としての金銭を取り戻すことになります。
否認権の効果の発生時期
否認権は、形成権であると考えられています。形成権とは、当事者の単独の意思表示により、権利の発生・消滅・変更などの法律効果を生じさせることのできる権利です。
そのため、否認権の効果は、破産管財人が否認権を行使した時点で生じます。
否認の訴えや否認請求の手続を行った場合は、裁判所に認容された時ではなく、否認権行使を主張した時点で効果が生じると考えられています。
なお、破産管財人が訴訟において抗弁として否認権を主張した場合、否認の抗弁が理由で破産管財人が勝訴した場合は、判決時ではなく、抗弁主張時に効果が生じます。
否認権行使の相手方の権利
前記のとおり、破産管財人が否認権を行使すると、相手方はいったんは取得したはずの財産や利益を失います。
とは言え、相手方が破産者に対して何らかの代価など反対給付を行っていることもあります。このような場合に何らの手当もないとすると、相手方の被る不利益が大きくなりすぎることもあります。
そこで、破産法では、否認権行使によって財産や利益を覆された相手方の権利についても、一定の配慮を設けています。
詐害行為否認の相手方の権利
破産法 第168条
- 第1項 第160条第1項若しくは第3項又は第161条第1項に規定する行為が否認されたときは、相手方は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
- 第1号 破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存する場合 当該反対給付の返還を請求する権利
- 第2号 破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存しない場合 財団債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
- 第2項 前項第二号の規定にかかわらず、同号に掲げる場合において、当該行為の当時、破産者が対価として取得した財産について隠匿等の処分をする意思を有し、かつ、相手方が破産者がその意思を有していたことを知っていたときは、相手方は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
- 第1号 破産者の受けた反対給付によって生じた利益の全部が破産財団中に現存する場合 財団債権者としてその現存利益の返還を請求する権利
- 第2号 破産者の受けた反対給付によって生じた利益が破産財団中に現存しない場合 破産債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
- 第3号 破産者の受けた反対給付によって生じた利益の一部が破産財団中に現存する場合 財団債権者としてその現存利益の返還を請求する権利及び破産債権者として反対給付と現存利益との差額の償還を請求する権利
- 第3項 前項の規定の適用については、当該行為の相手方が第161条第2項各号に掲げる者のいずれかであるときは、その相手方は、当該行為の当時、破産者が前項の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
- 第4項 破産管財人は、第160条第1項若しくは第3項又は第161条第1項に規定する行為を否認しようとするときは、前条第一項の規定により破産財団に復すべき財産の返還に代えて、相手方に対し、当該財産の価額から前三項の規定により財団債権となる額(第1項第1号に掲げる場合にあっては、破産者の受けた反対給付の価額)を控除した額の償還を請求することができる。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人が否認権を行使した場合、詐害行為の相手方が破産者に対して反対給付をしていたときは、以下の権利を取得します(破産法168条1項)。
- 反対給付が破産財団に残っている場合
相手方は反対給付の返還を請求する権利を取得する(破産法168条1項1号) - 反対給付が破産財団に残っていない場合
相手方は、財団債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利を取得する(破産法168条1項2号) - 反対給付が破産財団に残っていない場合に、詐害行為の当時、破産者が対価として取得した財産について隠匿等の処分をする意思を有し、かつ、相手方が破産者の意思を知っていたとき(破産法168条2項)
- 反対給付によって生じた利益の全部が破産財団に残っている場合
相手方は、財団債権者として現存利益の返還を請求できる権利を取得する - 反対給付によって生じた利益が破産財団に残っていない場合
相手方は、反対給付の価額の償還を請求する権利を取得し、破産債権者として配当に加わることができる - 反対給付によって生じた利益の一部が破産財団に残っている場合
相手方は、財団債権者として現存利益の返還を請求できる権利・破産債権者として反対給付と現存利益の差額を請求して配当に加われる権利を取得する
- 反対給付によって生じた利益の全部が破産財団に残っている場合
相手方の悪意の推定
破産法 第161条
- 第2項 前項の規定の適用については、当該行為の相手方が次に掲げる者のいずれかであるときは、その相手方は、当該行為の当時、破産者が同項第2号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
- 第1号 破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者
- 第2号 破産者が法人である場合にその破産者について次のイからハまでに掲げる者のいずれかに該当する者
イ 破産者である株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
ロ 破産者である株式会社の総株主の議決権の過半数を子株式会社又は親法人及び子株式会社が有する場合における当該親法人
ハ 株式会社以外の法人が破産者である場合におけるイ又はロに掲げる者に準ずる者- 第3号 破産者の親族又は同居者
引用元:e-Gov法令検索
前記のとおり、反対給付が破産財団に残っていない場合、相手方は財団債権者として反対給付の価額を請求できます(破産法168条1項2号)。
ただし、詐害行為の当時、破産者が対価として受け取った財産を隠匿等の処分をする意思を有していたことを相手方が知っていたときには、相手方の権利は制限されます(破産法168条2項)。
この場合、相手方が、破産者と以下の関係にある場合、「破産者に財産隠匿等の意思があること」について悪意があると推定されます(破産法168条3項、161条2項)。
- 法人破産の場合
- その法人の理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人またはこれらに準ずる者
- 破産者が株式会社である場合
- 総株主の議決権の過半数を有する者
- 総株主の議決権の過半数を子株式会社または親法人および子株式会社が有する場合における当該親法人
- 破産者が株式会社以外の法人である場合
- 総社員の議決権の過半数を有する者
- 総社員の議決権の過半数を子法人または親法人および子法人が有する場合における当該親法人
- 個人破産の場合
- 破産者の親族または同居人
悪意が推定される場合、破産管財人は、相手方の悪意を立証する必要がなくなります。推定を覆すには、相手方が悪意ではないことを立証する必要があります。
価額償還の請求
詐害行為否認の場合、破産管財人は、相手方に受け取った財産そのものの返還を求めるのが通常です。
ただし、破産法160条1項・3項・161条1項に基づいて詐害行為を否認した場合は、財産そのものの返還ではなく、財団債権となる価額を控除した金額の償還を求めることも可能です(破産法168条4項)。
この場合、破産法168条1項・2項によって財団債権となる相手方の権利を控除しているため、あらためて相手方が破産管財人に対して財団債権を請求することはできません。
偏頗行為否認の相手方の権利
破産法 第169条
- 第162条第1項に規定する行為が否認された場合において、相手方がその受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、相手方の債権は、これによって原状に復する。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人が偏頗行為を否認すると、相手方は受け取った給付を破産管財人に返還しなければいけません。
相手方が受け取った給付を返還するか、または価額を支払った場合、相手方が破産者に対して有していた債権が復活します(破産法169条)。
例えば、破産者が家族の借金にだけ返済したため否認され、受け取ったお金を家族が破産管財人に返還した場合、家族の破産者に対する貸金請求権が復活します。
債権が復活するので、相手方は破産債権者として配当に加わることができます。
転得者の権利
詐害行為や偏頗行為の相手方が、受け取った財産をさらに別の人に譲り渡した場合でも、一定の要件を充たせば、破産管財人は否認権を行使して、転得者から財産を取り戻すことが可能です(破産法170条)。
破産管財人が否認権を行使して転得者から財産を取り戻した場合も、転得者が反対給付をしていたときは、転得者には一定の配慮がされています。
詐害行為否認における転得者の権利
破産法 第170条の2
- 第1項 破産者がした第160条第1項若しくは第3項又は161条第1項に規定する行為が転得者に対する否認権の行使によって否認されたときは、転得者は、第168条第1項各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。ただし、同項第1号に掲げる場合において、破産者の受けた反対給付の価額が、第4項に規定する転得者がした反対給付又は消滅した転得者の債権の価額を超えるときは、転得者は、財団債権者として破産者の受けた反対給付の価額の償還を請求する権利を行使することができる。
- 第2項 前項の規定にかかわらず、第168条第1項第2号に掲げる場合において、当該行為の当時、破産者が対価として取得した財産について隠匿等の処分をする意思を有し、かつ、当該行為の相手方が破産者がその意思を有していたことを知っていたときは、転得者は、同条第2項各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
- 第3項 前項の規定の適用については、当該行為の相手方が第161条第2項各号に掲げる者のいずれかであるときは、その相手方は、当該行為の当時、破産者が前項の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
- 第4項 第1項及び第2項の規定による権利の行使は、転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする。
- 第5項 破産管財人は、第1項に規定する行為を転得者に対する否認権の行使によって否認しようとするときは、第167条第1項の規定により破産財団に復すべき財産の返還に代えて、転得者に対し、当該財産の価額から前各項の規定により財団債権となる額(第168条第1項第1号に掲げる場合(第1項ただし書に該当するときを除く。)にあっては、破産者の受けた反対給付の価額)を控除した額の償還を請求することができる。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人が詐害行為を否認したことによって転得者が財産を返還した場合、転得者が相手方または他の転得者に反対給付をしていたときは、以下の権利を取得します(破産法170条の2)。
- 破産者が受けた反対給付が破産財団に残っている場合
転得者は反対給付の返還を請求する権利を取得しする。ただし、破産者の受けた給付の価額が転得者の反対給付または転得者の債権の価額を超える場合は、財団債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利を取得する(破産法170条の2第1項、168条1項1号) - 破産者が受けた反対給付が破産財団に残っていない場合
転得者は、財団債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利を取得する(破産法170条の2第1項、破産法168条1項2号) - 破産者が受けた反対給付が破産財団に残っていない場合に、詐害行為の当時、破産者が対価として取得した財産について隠匿等の処分をする意思を有し、かつ、相手方が破産者がその意思を有していたことを知っていたとき(破産法170条の2第2項、破産法168条2項)
- 反対給付によって生じた利益の全部が破産財団に残っている場合
転得者は、財団債権者として現存利益の返還を請求できる権利を取得する - 反対給付によって生じた利益が破産財団に残っていない場合
転得者は、反対給付の価額の償還を請求する権利を取得し、破産債権者として配当に加わることができる - 反対給付によって生じた利益の一部が破産財団に残っている場合
転得者は、財団債権者として現存利益の返還を請求できる権利・破産債権者として反対給付と現存利益の差額を請求して配当に加われる権利を取得する
- 反対給付によって生じた利益の全部が破産財団に残っている場合
ただし、転得者が権利行使できるのは、転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付またはその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額が限度となります(破産法170条の2第4項)。
相手方の悪意の推定
前記のとおり、反対給付が破産財団に残っていない場合、転得者は財団債権者として反対給付の価額を請求できます(破産法170条の2第1項、破産法168条1項2号)。
ただし、詐害行為の当時、破産者が対価として受け取った財産を隠匿等の処分をする意思を有していたことを相手方が知っていたときには、転得者が取得できる権利は制限されます(破産法170条の2第2項、168条2項)。
前記のとおり、相手方が、破産者と破産法161条2項で定める関係にある場合、「破産者に財産隠匿等の意思があること」について悪意があると推定されます(破産法170条の2第3項、161条2項)。
転得者の否認の場合においても、相手方の悪意が推定される場合があるのです。
価額償還の請求
詐害行為の相手方に否認権を行使した場合と同様、破産法160条1項・3項・161条1項に基づいて転得者に対して否認権を行使した場合は、財産そのものの返還ではなく、財団債権となる価額を控除した金額の償還を求めることも可能です(破産法170条の2第5項)。
この場合、破産法170条の2第1項・2項によって財団債権となる相手方の権利を控除しているため、あらためて転得者が破産管財人に対して財団債権を請求することはできません。
偏頗行為否認における転得者の権利
破産法 第170条の3
- 破産者がした第162条第1項に規定する行為が転得者に対する否認権の行使によって否認された場合において、転得者がその受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、転得者は、当該行為がその相手方に対する否認権の行使によって否認されたとすれば169条の規定により原状に復すべき相手方の債権を行使することができる。この場合には、前条第4項の規定を準用する。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人が偏頗行為を否認したことによって転得者が受け取った給付を返還し、または価額を支払った場合、転得者は、「偏頗行為が相手方に対する否認権行使によって否認されたとすれば復活したであろう債権」を行使できます(破産法170条の3前段)。
具体的に言うと、転得者は、相手方の債権の範囲で破産債権者として配当に加わることができるようになります。
ただし、この場合、転得者が行使できるのは、転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付またはその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額が限度となります(破産法170条の3後段、170条の2第4項)。
- 破産者が、破産手続開始前に債権者Aに対して、借金の弁済として200万円相当の物品を代物弁済した
- その後、AはBに物品を売り渡し、BはAに代金100万円を支払った
この事例で、破産管財人が偏頗弁済を否認して、Bが物品を返還した場合
もし破産管財人がAに否認権を行使していたならば、Aの破産者に対する貸金請求権が復活していたはずであるため、Bは、このAの破産者に対する貸金請求権を行使できる
ただし、BがAから物品を取得するために支払った金額は100万円なので、Bが行使できるのは、Aの破産者に対する貸金請求権のうち100万円の部分に限られる
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
破産法と資格試験
倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。
この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。
ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現
参考書籍
破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。
破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。
条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。
破産管財人の財産換価(第2版)
編集:岡伸浩ほか 出版:商事法務
破産手続における破産管財人の財産換価処分について、財産の種類ごとなどに具体的な手続や方法を解説する実務解説書。実務家向けの本ですが、破産手続における財産処分のイメージをつかめるかもしれません。
司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。
倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。
倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。


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