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破産管財人との打ち合わせ(面談)では何を行うのか?実務運用を解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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法人破産・個人破産いずれの場合でも、破産管財人・破産者(法人・会社の破産においては代表者)・破産者代理人(弁護士)による三者打ち合わせ(面談)が実施されるのが通常です。

この打ち合わせでは、裁判所に提出されている破産手続開始の申立書を参考にしつつ、債務・負債の内容、債権者の顔触れや対応の状況、資産の内容・現状などの詳細を三者で確認した上で、その後の破産管財業務をどのように進めていくのか、破産者がどのような協力をすればよいのかなどを打ち合わせます。

破産管財人の業務

破産手続においては、破産者の財産が破産財団として管理・換価処分され、各債権者に弁済または配当されます。この一連の業務を行うのが、裁判所によって選任される破産管財人です。

破産者の財産を管理処分して弁済や配当をするためには、どのような財産や債務があるのかを調べ、適切に管理処分するにはどのような段取りで進めればよいのかなどの方針を決定しなければいけません。

また、個人破産の場合には、破産管財人が免責に関する調査も行うこととされているので、免責不許可事由があるか、裁量免責事由があるかなども調査する必要があります。

これらの調査や方針決定を効率よく進めるには、財産や負債の状況を最もよく知る破産者本人や破産法人の代表者などに話を聞くのが最も確実です。

そこで、破産手続では、調査の一環として、破産管財人・申立人破産者(破産法人の代表者)・申立人代理人弁護士による三者打ち合わせ(面談)が実施されるのが通例となっています。

破産管財人との打ち合わせの法的根拠

破産管財人と破産者・破産者代理人の打ち合わせをしなければならないと破産法で定められているわけではありません。

もっとも、破産管財人には、破産者や破産法人の代表者・役員に対して破産に関する説明を求める権限(説明請求権)が認められています(破産法83条1項前段)。

破産管財人との打ち合わせの法的根拠は、この説明請求権にあると考えられています。

なお、破産者や破産法人の役員には、破産管財人に対して破産に関する説明をしなければならない法的義務が課されています(破産法40条)。そのため、破産管財人から説明請求された場合、拒絶することはできません。

破産者や破産法人の役員が破産管財人に対する説明を拒絶したり、虚偽説明をしたりすると、刑罰や免責不許可などの不利益を被るおそれがあります(詳しくは後述します。)。

破産管財人との打ち合わせ(面談)が行われるケース

破産管財人が選任されない同時廃止事件の場合は、当然、破産管財人との打ち合わせは実施されません。

他方、破産管財人が選任される場合(管財事件)は、必ず全件について破産管財人との打ち合わせが実施されます。打ち合わせが行われないケースは、破産者などが重病で動けないような極めて例外的なケースに限られます。

破産管財人との打ち合わせは必ず実施されると考えておいて問題ないでしょう。

破産管財人との打ち合わせ(面談)の出席者

破産管財人との打ち合わせを行うのは、破産者です。代理人に弁護士がついている場合は、その弁護士も同席できます。そのため、3者打ち合わせと呼ばれています。

破産者の家族や関係者・司法書士であっても、破産管財人の許可がなければ同席はできません(代理人弁護士の場合は許可は不要です。)。

ただし、法人・事業者の破産の場合には、調査のために、代表者以外の役員や会計・経理担当の従業員などの同席を破産管財人から求められるケースもあります。

破産管財人との打ち合わせ(面談)の時期

破産管財人との打ち合わせ(面談)は、破産手続開始決定後、すみやかに行われます。対応が遅れると、資産が散逸したり、余分な費用が発生したりしてしまうことなどがあるからです。

一般的には、破産手続が開始してから1週間以内ほどの期間で打ち合わせが行われます(個人消費者の自己破産で緊急を要することが何もなければ、2週間以内ほどの期間になることもあります。)。

他方、緊急性を要する案件がある事件では、破産手続開始決定の翌日にも打ち合わせが実施されることもあります。さらに重大な場合は、破産手続開始の申立後に破産管財人候補者が選任され、破産手続開始前に打ち合わせが行われることもあります。

東京地方裁判所本庁の場合

上記のとおり、破産管財人との打ち合わせが実施されるのは、破産手続が開始された後であるのが通常です。

ただし、東京地方裁判所本庁(霞が関)だけは特殊で、破産手続開始を申し立てた後、破産手続が開始されるまでの間に、破産管財人(候補者)との打ち合わせを行わなければならないとされています。

東京地裁本庁の場合、破産手続開始の申立てから破産手続開始決定までは概ね1週間ほどしかないので、スケジュール的にはかなりタイトになります。

破産管財人との打ち合わせ(面談)の場所

破産管財人は、破産手続開始が申し立てられた裁判所が管轄する地域内に所在する法律事務所に所属する弁護士が選任されるのが通例です。

そのため、破産管財人との打ち合わせ(面談)は、当該破産管財人に選任される弁護士の所属する法律事務所において行われるのが一般的でしょう。

もっとも、法人・事業者の破産の場合は、現地調査も兼ねて、破産者の事業所・工場・倉庫などに赴いて打ち合わせが行われることも多いです。

破産管財人との打ち合わせ(面談)の内容

破産管財人との打ち合わせでは、破産者や破産法人の代表者から破産に関するさまざまなことが聴取されます。何を聴取するかが決められているわけではありません。聴取内容は事案によって異なります。

もちろん破産に関わらないプライベートな事柄まで聴取するわけではありませんが、破産に関わる限りは、非常に多岐にわたって聴取します。破産に関する事柄とは、以下の事項です。

破産管財人との打ち合わせの内容
  • 財産に関する事項の聴取
  • 債務に関する事項の聴取
  • 免責に関する事項の聴取
  • 書類・物件の提出や引継ぎ
  • その他破産手続の進行に関する打ち合わせ

以下、それぞれについて説明します。

財産に関する聴取

まず破産管財人が聴取するのは、財産に関することです。どの程度聴取するかは、破産者が持っている財産の数量や内容によって違いがあります。

財産については、以下のようなことを聴取します(これだけに限るわけではありません。)

財産に関する聴取事項
  • 破産手続開始の申立書の添付書類に記載されている財産の詳細
    財産目録などに記載されている財産の具体的な内容・数量・保管状況・査定額などが聴取されます。
  • 申告されていない財産の有無
    申告していない財産・隠している財産はないか、ある場合はその財産の具体的な内容・数量・保管状況・査定額などが聴取されます。
  • 破産手続開始前に処分した財産
    破産手続開始の時点では破産者の手元にない財産であっても、否認権の行使によって回収できる可能性もあるため、破産手続開始前に処分した財産がないか、いつ・誰に・いくらで処分したかなどを聴取することもあります。
  • 他に所有者・権利者がいるか否か
    破産者の手元にあるものでも、真の所有者が別にいる場合には取戻権を行使されて、財産を返還しなければならないため、他に所有者・権利者がいる財産はないかを聴取することもあります。
  • 担保権が設定されているか否か
    担保権者は破産手続外で別除権を行使できるため、財産に担保権が設定されているかどうかも確認されます。

これら財産についての情報を聴取した上で、追加資料の提出を求めたり、実際に換価処分する際の段取りなどを話し合ったりすることになります。

なお、個人破産では処分しなくてよい自由財産が認められていますが、自由財産に該当するか否かを判断しなければならないため、自由財産に該当する財産についても調査はされます。

債務に関する聴取

破産手続開始の申立てでは、債権者一覧表を添付して裁判所に提出する必要があります。とは言え、すべての債権者が記載されているとは限りません。

破産手続ではすべての債務を対象にしなければならない(個人破産の場合は、ライフラインの債務などは除かれます。)ので、債権者漏れがないかも確認する必要があります。

過失で債権者を申告し忘れるケースだけでなく、家族や知人、懇意の取引先などからの債務だけ意図的に申告しないケースもあります。

そのため、破産管財人との打ち合わせでは、債務に関しても聴取されます

免責に関する聴取

個人破産の場合には、破産管財人が免責不許可事由の有無(免責不許可事由がある場合は裁量免責事由の有無)を調査して、裁判所に意見書を提出しなければいけません。

そのため、打ち合わせ(面談)では、免責不許可事由の有無についても聴取が行われます

例えば、借金や負債が増えた原因(破産に至った経緯)は何か、換金行為や帳簿を改ざんしていないかなどについて聴取します。財産の隠匿や債権者隠しも免責不許可事由に該当するので、財産や債務の聴取とも重なり合います。

書類・物件の提出・引継ぎ

破産管財人との打ち合わせでは、破産者に質問するだけではなく、破産者から破産管財人へぼ書類提出や物件の引き継ぎも行われます。

法人・事業者の破産では、破産手続開始の申立書に添付した書類・重要書類の原本(決算書、帳簿類、通帳、有価証券、契約書など)、各種物件(不動産や車両の鍵など)を、破産者から破産管財人に引き継ぎます。

個人消費者の破産の場合では、あまり引き継ぐようなものはありませんが(通帳もコピーを提出して原本は破産管財人が確認するだけの場合がほとんどです。)、裁判所や破産管財人から事前に提出を求められていた書類を引き渡すこともあります。

その他破産手続の進行に関する打ち合わせ事項

上記のような財産・債務・免責に関する調査のための聴取だけでなく、破産管財人との打ち合わせでは、破産手続の進行に関しても話し合われます

個人消費者の破産ではあまり複雑な管財業務はないため、手続の進行について話し合われることは少ないかもしれませんが、法人・事業者の破産では、以下のようなことも話し合われるケースがあります。

破産手続の進行に関する打ち合わせ事項
  • 財産の引渡しや保管方法
  • 事業所・倉庫・工場など不動産の明渡しまでの段取り(個人破産の場合は、自宅不動産の明渡しまでの段取り)
  • 従業員の未払賃金立替払い制度の準備

これらを話し合って、緊急に取り掛からなければならない管財業務があるのか、今後管財業務をどのように執り行っていくべきか、破産者としてどのような協力をしなければならないのかなどを打ち合わせます。

破産管財人との打ち合わせ(面談)の回数

前記のとおり、破産管財人による打ち合わせ(面談)は、最低でも1回は必ず行われます。とは言え、打ち合わせを行う回数が決められているわけではありません。

個人消費者の破産であれば、1回だけ行われて終わるのが通常でしょう。かなり重大な問題でもない限り、2回以上打ち合わせをすることは稀です。

他方、法人・事業者の破産の場合は、必要に応じて複数回打ち合わせが実施されることも珍しくはありません。

破産管財人との打ち合わせ(面談)の所要時間

破産管財人との打ち合わせ(面談)にかかる所要時間は、事案の内容により異なります。

概ね30分〜1時間程度ですが、法人・事業者の破産の場合のように調査事項が多い事案では、もっと長くなることもあります。

とは言え、よほどの大規模事件でもない限り、1日がかりとなることはないでしょう。

破産管財人との打ち合わせ(面談)に対する誤解

前記のとおり、打ち合わせ(面談)の目的は、破産管財人が管財業務を行う上で必要となる調査をすることです。

破産したことについて破産者や破産法人の役員を非難したり、叱責したりするために行う面談ではありません(まれにそういう破産管財人もいますが、大半の破産管財人はそのような面談はしません。)。

財産隠しや虚偽の説明などをすれば、当然、厳しい対応を迫られるでしょうが、誠実に回答をすれば問題はありません。したがって、過度に緊張したり、怖いなどと考える必要はないでしょう。

補足:打ち合わせ時の服装は?

よくある質問に、「破産管財人との打ち合わせ(面談)ではどのような服装が良いのか?」があります。

もちろん、決まった服装はありません。ただし、人生にも関わりかねない重大な手続を行っている以上、社会人として最低限のマナーに反しない程度の服装で出頭した方がよいとは言えるでしょう。

破産管財人との打ち合わせを拒絶・虚偽申告した場合のペナルティ

前記のとおり、破産管財人には、破産者・破産法人の役員に対して破産に関する説明を求める権限(説明請求権)があります。他方、破産者・役員は、求められた破産に関する事項を説明する義務(説明義務)があります。

破産者や破産法人の役員が破産に関する説明を拒絶したり、虚偽の説明をした場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方の刑罰を科されることがあります(破産法268条1項、2項)。

また、個人破産の場合であれば、説明拒絶や虚偽説明は免責不許可事由となり、免責が許可されなくなるおそれもあります(破産法252条1項8号)。

説明拒絶や虚偽説明をすると、財産を失う上に債務の免除も認められず、刑罰まで科せられ、不利益だけを背負うことになりかねません。

もし読者が破産者・破産法人の役員であれば、破産管財人との打ち合わせでは、正直に質問に回答し、誠実に対応することをお勧めします。その方が、結局は失うものが少ないでしょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。

この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。

ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

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参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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