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どの債務整理手続(任意整理・自己破産・個人再生)を選択すべきか?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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クレジット・サラ金からの借金返済の問題の解決方法のことを「債務整理」と呼んでいます。この債務整理には,自己破産・個人再生・任意整理といった手続があります。

これらの手続にはそれぞれ一長一短があります。どれを選択すべきかは,それぞれのメリット・デメリットを考慮して慎重に選択しなければなりません。

どの債務整理手続を選ぶかの検討順序

債務整理には,自己破産個人再生任意整理などといったさまざまな方法があります。どれを選ぶのかによって,効果は異なってきます。

これらの債務整理手続のうち,どの手続を選択すればよいのかを一概に言うことはできません。

任意整理・自己破産・個人再生は,それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。しかも,各自の事情によって,享受できるメリットや被るデメリットの度合いに違いも出てきます。

個々の事情によってどの債務整理手続を選択すればよいのかは異なってくるのです。

もっとも,デメリットがあまりに大きければ債務整理をする意味が薄れてしまいます。したがって,検討する順序としては,できる限りデメリットの少ない手続から検討していくことになるでしょう。

消滅時効の援用・相続放棄などの活用の検討

前記のとおり、債務整理を検討する場合は、できる限りデメリットの少ない手続から検討していくべきです。

そのため、まず最初に検討するのは,任意整理・自己破産・個人再生といった債務整理の主な手続ではない手段を利用して借金の整理をすることができないかどうかです。その方がデメリットが小さいからです。

具体的に言うと、消滅時効の援用相続放棄などの手続によって借金の整理を図ることができないかどうかを検討することになります。

貸金業者からの借金は,原則として,最後に返済をした時から5年が経過すると時効によって消滅します。すでに時効期間が経過している借金については、この消滅時効援用することで、債務整理を図れます。

また、借金を相続してしまった場合には相続放棄をすることによってその借金を承継することを防ぐことができます。

これらの手続をとることができるケースであれば、任意整理・自己破産・個人再生をせず、ほとんどデメリットなしで債務を整理できます。

なお,20年以上の長い期間、貸金業者と取引を継続していた場合には,過払金が発生している可能性があります。この場合、借金はすべてなくなり,払い過ぎたお金を返してもらうだけの状態になっていることもあります。

任意整理を検討する

前記の方法がとれない場合、自己破産・個人再生・任意整理の手続のどれを選択すべきかを検討することになります。

この場合,まず最初に検討するのは、任意整理ができるかどうかでしょう。3つの手続のうち最もデメリットが小さいからです。

任意整理は,交渉によって借金を長期の分割払いにしてもらう手続です。通常は,利息をカットした上で36回の分割払いにしてもらうことになります。

そのため、任意整理ができるかどうかは、借金の総額を36で割って、その金額を毎月返済していけるかどうかによって判断します。

その金額を毎月返済していけるだけの収入があれば,任意整理を選択することが可能です。他方,そうでなければ,任意整理を選択するのは難しいことになります。

ただし,債権者によっては、36回以上の分割も可能な場合もあります。反対に、分割払い自体を認めない強硬な債権者もいます。債権者の顔ぶれによって判断が異なってくる場合はあるでしょう。

また,過払金の発生が見込まれる場合には,それを他者の返済に充てることも織り込んで判断する必要があります。

自己破産を検討する

任意整理が難しい場合には,自己破産か個人再生のどちらかを選択することになります。この場合、先に検討するのは、自己破産でしょう。

自己破産は,一定の財産を換価処分し,それでも支払いきれない借金の支払い義務を免責してもらう裁判手続です。

個人再生が非常に有用な制度であることは、間違いありません。また、デメリットの小ささから言うと、個人再生を先に検討した方がいいように思えます。

しかし、自己破産には、借金の全額免除という債務整理のために最も強力なメリットがあります。

そのため、任意整理できない場合はまず自己破産を検討し、自己破産が難しい場合に個人再生を検討する方がより良い選択が可能になるでしょう。

この自己破産の検討においては、自己破産のデメリットを十分に確認して判断する必要があります。自己破産は効果が強力な分、デメリットや制限も大きいからです。

自己破産のデメリットの検討

自己破産で特に問題となるのは,財産の処分や資格の制限です。

自己破産の場合、生活に必要となる最低限度の財産以外の財産は処分しなければなりません。また、破産手続中は公的資格を使って仕事をすることができなくなります。

さらに、自己破産の場合、浪費やギャンブルで借金を増やしてしまった場合、財産を不当に処分してしまった場合、換金行為をした場合などの免責不許可事由があるケースでは、免責を受けられないこともあり得ます。

そのため,任意整理ができない場合には基本的に自己破産を選択すべきですが,どうしても処分できない財産がある、公的資格を使った仕事を止められない、免責不許可事由があり免責許可されない可能性が高いなどの場合、自己破産を選択することが難しいことがあります。

その場合には、個人再生を検討することになります。

ただし,自己破産においては,生活に必要となる財産の多くは自由財産となり,処分が不要とされています。

資格の制限も、免責が許可されれば解除され、それ以降は普通に資格を使うことができるようになります。

また,免責不許可事由があっても,裁量によって免責が許可されることが大半です。過度におそれるほどのことではないでしょう。

個人再生を選択する基準

前記のとおり,任意整理が難しい場合、基本的に自己破産を選択すべきです。しかし,自己破産には,財産の処分や資格の制限などのデメリットがあります。

したがって,どうしても処分できない財産がある場合や資格を使って仕事をしているという場合には,自己破産を選択できないこともあるでしょう。

自己破産を選択できない場合、個人再生(個人民事再生)の手続を検討することになります。

個人再生は,自己破産と異なり,一定の返済は継続していかなければなりません。しかし,裁判によってその金額は大幅に減額される場合があり,しかも,3年から5年の長期分割払いにしてもらえます。

また,個人再生の場合には,基本的に財産の処分は不要ですし,資格の制限もありません。免責不許可事由があっても利用することができます。

さらに,個人再生には住宅資金特別条項と呼ばれる特別な制度があります。これを利用することができれば,住宅ローンの残っている自宅を処分せずに維持したまま,住宅ローン以外の借金のみを整理できるようになります。

このように,自己破産を選択できないという場合には個人再生を検討することになりますが,個人再生には厳しい利用条件(要件)があるので、常に誰でも利用できるわけではありません。

個人再生が難しい場合には、ある程度のデメリットを覚悟して自己破産を選択しなければいけないでしょう。

弁護士や司法書士への相談

どの債務整理手続を選択すべきかは,基本的に上記のような基準で判断することになりますが,個々の事情によってはなかなか判断が難しいという場合もあります。

どれを選んだらよいかわからない場合には,専門家である弁護士・司法書士に相談した方がよいでしょう。

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