この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています
- Q自己破産のデメリットとは?
- A
自己破産には借金全額を帳消しにできる強力なメリットがある反面、いくつかのデメリットがあります。
- ブラックリストに登録される
- 借入れ・ローンを利用できなくなる
- クレジットカードが使えなくなる
- 信販会社系列の賃貸保証会社を使えなくなる
- 携帯電話・スマートフォンの端末本体を分割払いで購入できなくなる
- 一定の財産を処分しなければならない(財産処分)
- 一定の公的資格を利用できなくなる(資格制限)
- 破産手続中は転居や出張などが制限される(居住制限)
- 破産手続中は郵便物が破産管財人に転送される(通信の秘密の制限)
- 自己破産したことが官報公告される
- 免責不許可になると、市町村の破産者名簿に登録される
- 手続をする対象を選べない
- 保証人・連帯保証人に請求される
- クレジットや分割払いで購入した商品が引き揚げられる可能性がある
- 携帯電話・スマートフォンを変更しなければならないケースがある
- 免責不許可事由があると免責が許可されない場合がある
- ブラックリストに登録される
このページでは、自己破産のデメリットについて詳しく説明します。
- 自己破産の12個のデメリット(詳細)
- 自己破産する際に注意しておくべきこと
- 自己破産のデメリットに関する誤解や間違い
- 自己破産した場合の家族への影響
- 自己破産を自分だけで行うデメリット

- 自己破産とは
- 自己破産のデメリット
- 自己破産と他の債務整理のデメリット比較早見表
- デメリット1:ブラックリストに登録される
- デメリット2:一定の財産が処分される
- デメリット3:一定の公的資格が制限される
- デメリット4:破産手続中は住所を自由に移転できなくなる
- デメリット5:破産手続中は郵便物が破産管財人に転送される
- デメリット6:自己破産したことが官報公告される
- デメリット7:免責不許可になると市町村の破産者名簿に登録される
- デメリット8:手続をする対象を選べない
- デメリット9:連帯保証人等に請求される
- デメリット10:クレジットやローンで購入した商品が引き揚げられる可能性がある
- デメリット11:携帯電話を変更しなければならない場合がある
- デメリット12:免責不許可事由があると借金を帳消しにできない場合がある
- 自己破産する際の注意点
- 自己破産のデメリットに対する誤解
- 自己破産のもう1つのデメリット
- 家族にもデメリットは生じる?
- 自己破産を自分だけで行うデメリット
- 弁護士の探し方
- 参考書籍
自己破産とは
自己破産とは、裁判所から免責を許可してもらうことによって、借金全額を帳消し(免責)にできる手続です。
言うまでもなく、自己破産のメリットは、借金全額を帳消しにできる点です。裁判所に免責を許可してもらえば、借金の返済はゼロになります。
借金返済の問題を解決する法的手段(債務整理)として、これ以上に強力な方法はありません。そのため、年間約7万人近くの人が自己破産を利用しています。
自己破産のデメリット
前記のとおり、自己破産には借金返済をゼロにする唯一無二の効力があります。
しかし、債権者(借金の貸主など)の受ける損失は小さくありません。何の不利益も受けずに全額免除の利益だけ受けられるとしては、債権者の理解を得られないでしょう。
そのため、自己破産には、他の債務整理方法(任意整理・個人再生)よりもデメリットが多く存在します。具体的には、以下のデメリットがあります。
- ブラックリストに登録される
- 借入れ・ローンを利用できなくなる
- クレジットカードが使えなくなる
- 信販会社系列の賃貸保証会社を使えなくなる
- 携帯電話・スマートフォンの端末本体を分割払いで購入できなくなる
- 一定の財産を処分しなければならない(財産処分)
- 一定の公的資格を利用できなくなる(資格制限)
- 破産手続中は転居や出張などが制限される(居住制限)
- 破産手続中は郵便物が破産管財人に転送される(通信の秘密の制限)
- 自己破産したことが官報公告される
- 免責不許可になると、市町村の破産者名簿に登録される
- 手続をする対象を選べない
- 保証人・連帯保証人に請求される
- クレジットや分割払いで購入した商品が引き揚げられる可能性がある
- 携帯電話・スマートフォンを変更しなければならないケースがある
- 免責不許可事由があると免責が許可されない場合がある
これらのデメリットについては、間違った情報が広まっていることがあります。正しい情報に基づいて判断することが重要です。
自己破産と他の債務整理のデメリット比較早見表
自己破産のメリット・デメリットは、他の債務整理手続と比べるとわかりやすいです。
| 比較項目 | 自己破産 | 任意整理 | 個人再生 |
|---|---|---|---|
| 借金の減免 | 全額帳消し(免責) 返済はゼロ | 通常は将来利息のカットのみ | 元本の大幅減額 利息の全面カット |
| 利用額の上限 | なし | なし | 5000万円 |
| 収入の条件 | なし | 返済可能な収入があることが条件 | 返済可能な継続的収入があることが条件 |
| 各種の利用条件 | やや厳しい | 緩やか | かなり厳しい |
| ブラックリストの期間 | 免責許可から5年 または破産手続開始から7年 | 完済から5年 | 完済から5年 または再生手続開始から7年 |
| 財産の処分 | あり ※自由財産を除く | なし | なし |
| 公的資格の制限 | あり | なし | なし |
| 居住制限 | あり | なし | なし |
| 郵便物の転送 | あり | なし | なし |
| 官報公告の有無 | あり | なし | あり |
| 手続対象の選択 | 選択できない | 選択できる | 選択できない |
| 借金の原因による影響 | あり(免責不許可事由として扱われる場合がある) | なし | なし |
以下、自己破産のデメリットについてさらに詳しく説明します。
デメリット1:ブラックリストに登録される
自己破産すると、3つの信用情報機関が保有する個人信用情報に事故情報(異動情報)が掲載されます。いわゆる「ブラックリスト」です。
このブラックリストへの登録は、自己破産に限らず、債務整理に共通するデメリットです。
ブラックリストに登録されるとどうなる?
金融機関は信用情報をチェックして、お金を貸すかを審査します。信用情報に事故情報が掲載されていれば、返済能力がないと判断し、審査を通さないでしょう。
そのため、自己破産すると、以下のことは非常に難しくなります。
- 借入れすること
- ローンを組むこと
- クレジットカードの利用
- 信販会社系列の賃貸保証会社の利用
- 携帯電話・スマートフォン本体の分割払い購入
影響1:借金やローンの利用ができなくなる
自己破産をしてブラックリストに登録されると、貸金業者や銀行などの金融機関からの借り入れは非常に難しくなります。
キャッシングだけでなく、各種のローンを組んでお金を借りることも困難です。自動車ローンや住宅ローンも、事故情報が掲載されている間は審査に通りにくいでしょう。
影響2:クレジットカードを利用できなくなる
クレジットカードの利用残高がある場合、自己破産するとカードを強制的に解約されます。
クレジットカード会社は定期的にカード利用者の信用情報をチェックしています。そのため、利用残高がなく自己破産の対象にならなかったカードも、いずれ使えなくなる可能性が高いです。
また、ブラックリストに登録されている以上、新規でクレジットカードを作成することも困難です。
そのため、自己破産すると、クレジットカードはすべて使えなくなるでしょう。
影響3:信販会社系の賃貸保証会社を利用できなくなる
家・部屋を借りる際、賃貸借契約の保証人として賃貸保証会社が付けられる場合があります。
この賃貸保証会社が信販会社やその系列である場合、信用情報を確認している可能性があります。
そのため、自己破産してブラックリストが掲載されていると、賃貸保証の審査に通らず、家・部屋を借りれないケースがあります。
自己破産した後に物件を借りる際は、信販系でない賃貸保証会社に変更したり、連帯保証人に変更したりする必要した方が良いでしょう。
影響4:携帯電話やスマートフォンを分割払いで購入できなくなる
携帯電話やスマートフォンの端末本体を分割払いで購入する場合も、ブラックリストが影響します。そのため、自己破産して事故情報が掲載されていると、携帯電話やスマートフォン端末本体を分割払いで購入することも難しくなるでしょう。
ただし、影響があるのは「分割払い」で購入する場合だけです。一括払いで購入することには何も問題はありません。
ブラックリストが消えるまでの期間
自己破産したからといって、一生ブラックリストが掲載され続けるわけではありません。
裁判所の手続が開始してから7年(または免責が許可されてから5年)経過すると、事故情報は削除されます。
事故情報が消えれば、再び借入れ・ローン・クレジットカードの利用は可能になるでしょう。
ブラックリストにこだわりすぎるのはNG
ブラックリストに登録されるのは自己破産に固有のデメリットではありません。任意整理や個人再生でも、ブラックリストに登録されます。
あまりブラックリストにこだわっていると、いつまでも債務整理に踏み切れず、借金を増やすだけです。借金が増え続けると、いずれ延滞して、結局ブラックリストに載ってしまいます。
ブラックリスト入りしても、期間が経過すれば削除されます。期間中は、デビットカードを利用すれば、クレジットカードを使えない不便も補えます。
ブラックリストへの登録を過剰に不安なものと考えず、早めに債務整理に取り掛かることが、生活を立て直し、信用をより早く取り戻すことにもつながるのです。
デメリット2:一定の財産が処分される
自己破産をすると、一定の財産が強制的に処分されます。この財産処分が、自己破産の一番のデメリットでしょう。
ただし、すべての財産が処分されるわけではありません。自己破産しても処分されずに残しておける財産は少なくありません。
処分されない財産(自由財産)
前記のとおり、自己破産すると一定の財産が強制処分されるとは言っても、すべての財産が処分されるわけではありません。
破産法で定められている処分不要財産(自由財産)は、手放さずに済みます。自由財産には、以下のものがあります。
実務で自由財産と認められる財産
上記の破産法で認められる自由財産だけでなく、実務では、各裁判所で処分しなくてよい財産の範囲を拡張する基準を定めています。
例えば、東京地方裁判所では、以下の財産も処分不要とされています。
- 残高(複数ある場合は合計額)が20万円以下の預貯金
- 見込額(数口ある場合は合計額)が20万円以下の生命保険解約返戻金
- 処分見込額が20万円以下の自動車
- 居住用家屋の敷金債権
- 電話加入権
- 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下の退職金債権
- 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金債権の8分の7相当額
- 家財道具
この基準は裁判所によって異なるので(それほど大きくは変わりません。)、あらかじめ弁護士に相談して、申し立てを予定している裁判所の運用を確認しておきましょう。
デメリット3:一定の公的資格が制限される
裁判所の破産手続が開始すると、公的資格が利用できなくなります。資格を使って仕事をしている場合、中断しなければいけません。
代表的な例は、警備員、保険外交員、各種の士業などです。
もっとも、免責が許可されると資格制限は解除されます。資格を使った仕事ができないのは破産手続中の2~4か月ほどです。一生資格が使えなくなるわけではありません。
なお、万が一免責不許可となった場合でも、一定期間経過後に復権を得れば、資格制限は解かれます。
デメリット4:破産手続中は住所を自由に移転できなくなる
裁判所の破産手続が開始されると、裁判所の許可がないと転居や長期旅行できなくなります(居住制限)。
ただし、事前に裁判所の許可を得ればよいので、まったく転居や旅行できないわけではありません。正当な理由があり、ちゃんと連絡がとれるのであれば許可されます。
また、居住制限は、破産手続の期間中だけです。自己破産の手続が終われば、自由に転居や旅行できます。
デメリット5:破産手続中は郵便物が破産管財人に転送される
自己破産をすると、通信の秘密も制限されます。具体的に言うと、裁判所での破産手続中、郵便物が破産管財人に転送され、中身をチェックされます。
破産管財人とは、裁判所により選任され、財産の調査・売却処分、借金の調査・配当、免責の調査などを行う人のことです。これら破産管財人による調査の一環として、郵便物の転送が実施されるのです。
なお、破産管財人が選任されない同時廃止の場合には、郵便物の転送は行われません。また、転送されるのは郵便物だけで、宅配便は転送されません。
デメリット6:自己破産したことが官報公告される
自己破産すると、国の機関紙(官報)に氏名や住所とともに自己破産の手続をしていることが掲載されます。そのため、まったく誰にも知られずに自己破産することはできません。
とは言え、官報を定期的にチェックしている人は限られています。例えば、金融機関、保険会社、警備会社などです。
上記の職業に就いている場合でもない限り、官報から家族や周囲の人に知られることは少ないです。あまり心配する必要ないでしょう。
デメリット7:免責不許可になると市町村の破産者名簿に登録される
自己破産で免責が不許可になると、本籍地の市区町村役場に通知され、破産者名簿に登録されます。
ただし、このデメリットは、あくまで「免責が許可されなかった場合(免責不許可)だけ」です。免責が許可された場合は、通知も名簿登録もされません(最高裁民三第000113号平成16年11月30日最高裁判所事務総局民事局長通達)。
なお、万が一免責が不許可になった場合でも、一定期間経過後に復権を得れば、破産者名簿は閉鎖されます。
デメリット8:手続をする対象を選べない
自己破産ではすべての債権者が対象になるため、自己破産する相手を自分で選べません(債権者平等の原則)。
そのため、家族からの借金、保証人が付いている借金、自動車ローンや住宅ローンだけ対象から外すこともできません。
特定の借金やローンだけは対象にしたくない場合は、任意整理を選択するほかないでしょう。
デメリット9:連帯保証人等に請求される
保証人や連帯保証人のついている借金がある場合、自己破産すると、その貸主は、保証人や連帯保証人に代わって支払うよう請求します。
自己破産する本人のデメリットではありませんが、連帯保証人等に迷惑をかけてしまう点からすると、自己破産のデメリットであると言えるかもしれません。
自己破産ではすべての債権者を対象にしなければいけないため、保証人等が付いている借金だけ外すことはできません。
そのため、どうしても保証人等に迷惑をかけたくない場合は、対象を選べる任意整理を選択するしかありません。
デメリット10:クレジットやローンで購入した商品が引き揚げられる可能性がある
クレジットカードや割賦払いの残高がある場合、自己破産すると、購入した商品を引き揚げられる可能性があります。
たとえば、自動車ローンの残高がある場合に自己破産すると、自動車をローン会社に引き揚げられます。
自己破産では対象にする相手を選べないため、物販ローンだけ外すことはできません。どうしても引き揚げられたくない商品がある場合は、任意整理を選ぶほかないでしょう。
なお、商品によっては引き揚げ対象にならないものもあるため、あらかじめ弁護士に相談しておくのが確実です。
デメリット11:携帯電話を変更しなければならない場合がある
携帯電話やスマートフォンの本体代金を分割で支払っている場合、未払い分は債務として扱われる可能性があります。
端末本体の未払い分が債務として扱われた場合、自己破産すると、携帯電話やスマートフォンの契約が解約され、使えなくなってしまいます。
本体代金が残っている場合は、あらかじめ一括払いで別の本体や格安SIMなどを購入しておいた方が無難でしょう。
デメリット12:免責不許可事由があると借金を帳消しにできない場合がある
自己破産を裁判所に申し立てれば常に借金の帳消し(免責)が許可されるわけではありません。破産法で定める一定の事由(免責不許可事由)がある場合は、免責が許可されないケースもあります。
免責不許可事由には、借金の原因が何であるかが関わるものもあります。借金の原因によっては免責を許可してもらえない場合があることも、自己破産のデメリットのひとつと言えるでしょう。
免責不許可事由の具体例
例えば、免責不許可事由には、以下のようなものがあります。
- 家族や親族に財産の名義を移した
- 知り合いに財産をただであげてしまった(または適正価格より低い金額で売却した)
- 闇金から高利で借入れした
- クレジットカードで購入した商品を、代金完済前に転売して換金した
- 家族や親族からの借金だけ返済した
- 浪費・ギャンブル・投資の失敗などで借金を過大に増やした
- 家族や親族からの借金だけ裁判所に申告しなかった
- 裁判所や破産管財人からの質問に応えなかったり、虚偽の申告をした
免責不許可事由がある場合でも免責が許可されるケース(裁量免責)
免責不許可事由がある場合であっても、必ず免責不許可になるとは限りません。免責不許可事由がある場合でも、裁判所は一切の事情を考慮して免責を許可できます(裁量免責)。
そのため、「免責不許可事由があるから自己破産はできない」と判断するのは早計です。裁量免責によって免責許可されるケースは多いです。
免責不許可事由に該当する事情がある場合でも諦めず、まずは弁護士に相談して裁量免責の可能性があるかどうかを確認してみましょう。
自己破産する際の注意点
対処が可能であるためデメリットとまでは言えないものの、自己破産する際に注意しておくべきことがあります。
利用中の預金口座を変更しておく
銀行カードローンや融資など銀行からの借入れがある場合、自己破産すると、その銀行の預金口座が一時的に凍結されます。
解約になることはありませんが、凍結されると、入金は可能なものの出金はできなくなる可能性があります。残高があれば、強制的に借金の返済に充てられてしまいます(預金相殺)。
債権者の銀行口座を使っている場合は、事前に以下の対応をしておきましょう。
- 給料や年金などの振込口座を、自己破産の対象にならない口座(借入れをしていない銀行の口座)に変更しておく
- 家賃や公共料金の支払方法を、振込用紙払いや自己破産の対象にならない口座からの引き落としなどに変更しておく
- 預金残高をゼロ円にしておく
なお、預金口座を開設している銀行や信用金庫などからの借入れがない場合には、口座が凍結されることはありません。凍結されるのは、あくまで自己破産の対象とする金融機関で口座を開設している場合に限られます。
クレジットカード払いを変更しておく
自己破産すると、5〜7年ほど信用情報に事故情報(ブラックリスト)が掲載され、クレジットカードが使えなくなります。
クレジットカードが使えないので、カード払いにしていたものの支払いもストップします。
必要なサービスの支払いがある場合は、あらかじめ支払方法を、銀行預金口座からの引き落としや振込用紙払いに変更しておきましょう。
例えば、以下のようなものはクレジットカード払いにしていることが多いので、確認してみてください。
- 公共料金:電気・ガス・水道など
- 通信費:携帯電話の通話料金・インターネットのプロバイダ料金など
- 税金の支払い
- 保険料の支払い
- その他サブスクサービスの支払い
自己破産のデメリットに対する誤解
上記のとおり、自己破産にはいくつかのデメリットや制限があります。ただし、自己破産のデメリットや制限については、誤った情報が広まっていることがあります。
正しい情報をもとに、自己破産するかどうかを判断しましょう。
- すべての財産が処分されてしまうわけではない
- 銀行口座はいつでも開設できる
- 年金や生活保護がもらえなくなることはない
- 免責が許可されれば、公的資格の制限は解除される
- 選挙権や被選挙権は制限されない
- 破産手続が終われば、引っ越しや旅行は自由
- 破産手続が終われば、郵便物の転送も終了する
- 戸籍や住民票には何も記載されない
- ギャンブルや浪費で借金を増やしても免責が許可されるケースは多い
- 債権者から嫌がらせを受けることはない
自己破産に対する無用な不安を払しょくするには、自己破産についての正しい理解が必要です。
以下、それぞれについて詳しく説明します。
すべての財産が処分されるわけではない
前記のとおり、自己破産すると財産が処分されますが、すべての財産が処分されるわけではありません。破産法で定められている自由財産は、処分せずに持っておくことが可能です。
自己破産したからといって、本当に「裸一貫」になってしまうわけではないのです。
銀行預金口座はいつでも開設できる
銀行や信用金庫などからの借金があると、その銀行などの預金口座が一時的に凍結されます。
しかし、あくまで凍結されるだけです。自己破産の手続が終われば凍結は解除されますし、解約されることもありません。また、自己破産しても、新規で預金口座を開設することは可能です。
年金や生活保護がもらえなくなることはない
自己破産したことは、年金や生活保護をもらう権利には影響を及ぼしません。そのため、自己破産しても、年金や生活保護は受け取れます。
また、年金や生活保護を受け取る権利は、処分不要の財産とされているため、自己破産で取り上げられることもありません。
免責が許可されれば公的資格を使えるようになる
裁判所の破産手続が開始されると公的資格の利用が制限されますが、一生資格が使えなくなるわけではありません。裁判所に免責を許可してもらえば、資格制限は解除されます。
なお、万が一免責が許可されなかったとしても、一定期間経過後に裁判所で復権の手続を行えば、資格制限は解除されます。
選挙権は制限されない
上記のとおり、自己破産には資格制限がありますが、この資格に選挙権は含まれません。そのため、自己破産しても、選挙権は普通に行使できます。
また、選挙権だけでなく、国政選挙や地方選挙に立候補する権利(被選挙権)も、自己破産によって失うようなことはありません。
破産手続が終われば引っ越しや旅行は自由
裁判所での破産手続中は、転居や長期旅行をするのに裁判所の許可が必要です(居住制限)。もっとも、この居住制限は、破産手続が終われば解除されます。
また、期間中でも、連絡が確実にとれるのであれば、裁判所が転居や仕事の出張を許可しないことはほとんどありません。
破産手続が終われば郵便物の転送も終了する
裁判所の破産手続中は、破産管財人に郵便物が転送され、中身をチェックされます。もっとも、この郵便物の転送も破産手続が終われば終了します。
また、破産手続の期間中でも、破産管財人のチェックが終わればいつでも返してもらえます。
戸籍や住民票には何も記載されない
自己破産すると、国の機関紙(官報)に氏名や住所などが掲載されます。しかし、戸籍や住民票に自己破産したことが記載されることは一切ありません。
なお、万が一免責が不許可になった場合、市町村役場に通知されて破産者名簿に登録されますが、それでも戸籍や住民票へ記載されるわけではありません。あくまで内部資料としての名簿に登録されるだけです。
ギャンブルや浪費などが原因でも免責許可されるケースがある
前記のとおり、自己破産の手続をしても、破産法で定める一定の事由(免責不許可事由)があると、借金の帳消し(免責)を許可してもらえない場合があります。
代表的な免責不許可事由は、ギャンブルや浪費などで借金を過大に増やした場合です。
ただし、免責不許可事由があっても、裁判所の裁量で免責が許可されることは多いです。
真摯に反省し破産手続に協力したなどの事情があると、ギャンブルや浪費が借金の原因でも、裁量で免責されることがあります。
免責不許可事由があるからといってすぐに諦めるのではなく、裁量免責できるかを弁護士に相談してみましょう。
自己破産しただけで勤務先の会社を解雇されることはない
従業員を解雇するには、正当な理由がなければいけません。ただ従業員が自己破産しただけでは、解雇の理由になりません。
そのため、自己破産したことを勤務先の会社に知られたとしても、そのことだけを理由に解雇されることはありません。
自己破産すると家族や勤務先に知られる?
自己破産すると官報に掲載されます。しかし、官報を定期的にチェックする仕事でもない限り、官報から自己破産していることを知られる可能性は低いです。
そのため、自己破産だから他の債務整理方法よりも知られやすいとは言えないでしょう。
知られる可能性があるとすると、以下のようなケースです。
- 家族や勤務先から借金しているため、債権者として裁判所からの連絡が届く
- 家族や勤務先が借金の保証人になっているため、貸主から代わりの支払いを求める請求が届く
- 家族も使っていた財産(特に自宅不動産)が突然売却されて、気づかれる
- 家族に財産の名義を移転したり、家族や勤務先からの借金だけ返済したため、破産管財人から返還を求められる
- 債権者から訴訟を起こされ、自宅に裁判所からの訴状が届いたことによって、自己破産も気づかれる
- 債権者から給料を差し押さえられたため、裁判所から勤務先に命令書が届き、そこから自己破産も知られる
自己破産の手続では家族の協力が必要な場合もあるため、隠すのではなく、できれば家族には正直に話して協力を求めた方がよいでしょう。
自己破産のもう1つのデメリット
自己破産にはいくつかのデメリットがあるものの、「借金全額を帳消しにできる」メリットに比べれば、過大な制約とまでは言えません。
特に処分する財産がないような場合は、受けられるメリットの方が明らかに大きくなります。
その点からすると、自己破産の一番のデメリットは、「世間の目」や「世間体が悪い」ところにあるのではないでしょうか。
しかし、自己破産をしても、周囲に知られる可能性はそれほど大きくありません。実際、世間に知られずに自己破産を終える人が大半です。世間体を気にする必要も、実はそれほどありません。
世間体ばかり気にして自己破産の大きなメリットを享受せずに債務整理を諦めて苦しい生活を続けていくというのは、実にもったいないような気がします。
家族にもデメリットは生じる?
自己破産をして直接的な影響を受けるのは、本人のみです。自己破産しても家族には直接的な影響はありません。
ただし、自己破産の効果が生じることで、間接的に家族に影響を生じることはあります。
家族に直接的な影響はない
自己破産による財産の処分、資格制限、居住制限、ブラックリストの登録などは、破産した本人(破産者)だけに生じます。家族には直接的な影響は何も生じません。
たとえば、家族には、以下のとおり直接的なデメリットはありません。
- 家族が借金を肩代わりする必要はない
- 家族の信用に傷はつかないので、借入れ・ローン・クレジットカードを利用できる
- 家族名義の財産は処分されない
- 家族が自分の公的資格を利用できなくなることはない
- 家族は転居や旅行も自由にできる
- 家族宛の郵便物は転送されない(破産した人と連名で送られてきた郵便物は転送される)
家族に影響が及ぶケース
上記のとおり、自己破産したからといって、家族には直接的な影響は及ばないのが原則です。
ただし、以下のケースでは、家族に影響が及ぶことがあります。
- 家族が保証人・連帯保証人になっている場合
破産者の代わりに貸主から支払いを求められます。 - 家族の借金だけ返済したり、財産を隠すために家族の名義に移したりした場合
家族が破産管財人から返還を請求されることもあります。 - 家族と一緒に利用していた財産が処分された場合
家族も財産を使えなくなるため、間接的に影響が及びます。特に自宅不動産が処分された場合は、家族も引っ越しが必要です。 - 家族カードを利用していた場合
自己破産すると、本人名義のクレジットカードは使えなくなります。そのカードに紐づいていた家族カードも使えなくなります。
自己破産を自分だけで行うデメリット
自己破産の申立ては、必ず弁護士に依頼しなければいけないわけではありません。弁護士に依頼せずに、自分だけで申し立てる「本人申立て」も可能です。
ただし、裁判所も弁護士に依頼して申し立てることを推奨しています。本人申立ては、費用を抑えられるメリットはあるものの、以下のようなデメリットがあるからです。
法的知識に誤りがあると不利益を生じる可能性が高い
自己破産の手続をするには、破産法その他の法律の知識や裁判所の運用などの実務経験が必要になってきます。インターネットで簡単に説明されているものを鵜呑みにして本人申立てをすると、不利益を受けかねません。
「本人申立てに成功した」ような体験談ブログなどもありますが、単に問題のない簡単な事案であったため、たまたま上手くいった事例に過ぎません。上手くいかなかった人はブログなど書かないでしょう。
裁判所が弁護士に依頼することを推奨しているのは、本人申立てでは上手くいかないことを知っているからです。
債権者・裁判所・破産管財人に自分で対応しなければいけない
自分だけで債務整理する場合には、借金の貸主など債権者にはすべて自分で対応しなければいけません。進捗の説明なども自分でする必要があります。
弁護士に依頼していれば、借金の貸主など債権者への対応はすべて弁護士が行ってくれます。取立ても停止するので、債権者と直接対峙する必要はなくなります。
また、自己破産の手続が始まれば、裁判所や破産管財人からさまざまな質問や要請を受けることになります。法的な対応が必要となることも多いです。
裁判所や破産管財人の質問や要請に応え、破産手続に協力することは自己破産を申し立てた人の法的義務です。違反すれば、免責が不許可になるなどの不利益を受けます。
これらの債権者・裁判所・破産管財人などへの対応をすべて自分で行うのは、なかなか難しい面があります。精神的な負担も大きいでしょう。弁護士に依頼するのが最善です。
少額管財を利用できなくなる
自己破産の手続には、破産管財人が選任される管財事件と選任されない同時廃止事件があります。管財事件が自己破産の原則的形態です。
管財事件では、裁判所に引継予納金を納付しなければいけません。この引継予納金は非常に高額ですが、裁判所によっては引継予納金を低額化した「少額管財」を運用しているところがあります。
しかし、少額管財は「弁護士に依頼している場合」だけしか利用できません。本人申立てや司法書士に依頼している場合では、少額管財にはならないのです。
少額管財であれば引継予納金は原則20万円で済みますが、少額管財でない管財事件(特定管財)では最低50万円からです。弁護士に依頼した方が全体の費用が安く済むことさえあり得ます。
同時廃止になりにくい
破産管財人が選任されない同時廃止では、管財事件に比べてかなり費用面でも手続の負担面でも軽くなります。
ただし、同時廃止は、自己破産を申し立てる前に十分な客観的・法的な調査がされていることが前提です。本人申立ての場合、基本的に自己申告にすぎないので、客観的な調査と認めてもらうのが難しいです。
そのため、本人申立ての場合は、基本的に管財事件(少額管財にもならないので、特定管財事件)となり、同時廃止になるのは生活保護を受けている場合などに限られます。
同時廃止は、少額管財のように弁護士に依頼していることが条件とはなっていません。しかし、弁護士に依頼している場合でないと同時廃止になることは少ないでしょう。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
弁護士の探し方
「自己破産をしたいけどどの弁護士に頼めばいいのか分からない」
という人は多いのではないでしょうか。
現在では、多くの法律事務所が自己破産を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、自己破産を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人の自己破産の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
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参考書籍
本サイトでも自己破産について解説していますが、より深く知りたい方のために、自己破産の参考書籍を紹介します。
破産実務Q&A220問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
破産実務を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、破産実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。
破産・民事再生の実務(第4版)破産編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、破産事件の実務全般について解説されています。
破産管財の手引(第3版)
編著:中吉徹郎 出版:金融財政事情研究会
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。破産管財人向けの本ですが、申立人側でも役立ちます。
はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。
破産申立マニュアル(第3版)
編集:東京弁護士会倒産法部 出版:商事法務
東京弁護士会による破産実務書。申立てをする側からの解説がされています。代理人弁護士向けの本ですが、自己破産申立てをする人の参考にもなります。



