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株式や社員の地位は相続されるか?相続財産(遺産)該当性や探し方を解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

Q
株式や社員の地位は相続される?
A

会社の種類によって相続されるか否かが異なります。株式や有限会社の社員の地位は相続されますが、持分会社の持分は定款に定めがない限り相続されません。

この記事では、株式会社の株主の地位(株式)や各種会社の社員の地位が相続されるのかについて説明します。

この記事で説明していること
  • 株式会社の社員の地位(株式)・株主権の相続
  • 有限会社の社員の地位・社員権の相続
  • 合名・合資・合同会社の社員の地位(持分)・持分権の相続
  • 民法上の組合員の地位の相続
  • 社員の地位・社員権の探し方や一般的な相続手続の流れ

社員の地位・社員権とは

一般に「社員」と言うと取締役でない従業員と捉えられていますが、法律上の「社員」は従業員や取締役のことではありません。

法律上の「社員」は、会社の持分を有する人のことを指します。つまり、オーナーです。代表的な例は、株式会社の株主です。

社員には、その会社などの法人から配当を受ける権利や会社経営に参加できる権利などが認められます。この社員の地位・資格に基づいて会社に対して各種の請求ができる地位・権利を「社員権」といいます。

社員の地位・社員権の相続財産該当性

相続が開始されると、被相続人が有していた一切の権利義務が相続人に承継されます。相続人に承継される被相続人が有していた権利義務を「相続財産」といいます。

この相続財産には、形のある物だけではなく、権利や法律上の地位なども含まれます。

そのため、被相続人が生前、株式会社の株主など社員であった場合に、被相続人の死亡によって、その社員たる地位やそれに伴う社員権も相続財産に含まれることになるのかが問題となってきます。

社員たる地位や社員権が相続財産に含まれるかどうかは、会社の性質によって異なってきます

会社・団体の種類相続されるか共同相続の場合
株式会社相続される遺産分割が必要
特例有限会社相続される遺産分割が必要
合名・合資・合同会社社員の地位(持分)は相続されない(定款に定めがある場合は相続される)
持分払戻請求権は相続される
定款により持分が相続される場合・持分払戻請求権は、遺産分割が必要
民法上の組合組合員の地位は相続されない
出資金払戻請求権は相続される
出資金払戻請求権は、相続分に応じて分割承継(遺産分割は不要)

以下、会社・団体の種類ごとに詳しく説明します。

株式会社の社員の地位(株式)・株主権

株式会社の社員のことを「株主」といい、株主の地位のことを「株式」といいます。そして、株式に基づく社員権を株主権といいます。

被相続人が株取引をしていた場合や会社経営者であった場合、被相続人の有していた株式を相続においてどのように扱えばよいかが問題となります。

相続財産該当性

株式会社は、社員相互間の人的関係を重視しない形態の会社(物的会社)であるため、株式に人的な個性は求められません。特定の誰かでなければ株主になれないような性質のものではないのです。

そのため、株式や株主権は、被相続人の一身専属権ではなく、通常の財産と同様、相続財産に含まれると解されています。

相続人が複数人いる場合(共同相続)

前記のとおり、株主の地位や株主権は相続財産として相続人に受け継がれます。

ただし、株式は単なる金銭債権ではありません。

株主たる地位に基づいて、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利などの自益権 と、株主総会における議決権などの共益権も含まれています。

そのため、相続開始によって当然に共同相続人に分割されるわけではなく、共同相続人の準共有となると解されています(最一小判昭和45年1月22日等)。

この株式の準共有状態を解消するには、遺産分割をして具体的に誰がどの程度の割合で地位・権利を取得するのかを確定させる必要があります

有限会社の社員の地位・社員権

有限会社(現在の特例有限会社)の社員の地位や社員権は、基本的に株主の地位・株主権と同じように考えることができます。

相続財産該当性

有限会社(現在の特例有限会社)も、株式会社と同様、社員相互間の人的関係を重視しない物的会社です。

そのため、有限会社の社員の地位・社員権も、一身専属性がないので、相続財産に含まれます。相続されるのです。

相続人が複数人いる場合(共同相続)

有限会社の社員の地位・社員権も、単なる金銭債権ではなく、議決権などの共益権も含みます。

そのため、相続開始によって当然に共同相続人に分割承継されることはなく、遺産分割が終わるまで共同相続人全員での準共有になると解されています。

株式と同様、有限会社の社員の地位・社員権が準共有になっている状態を解消するためには、遺産分割で具体的に誰がどの程度の割合で地位・権利を取得するのかを確定させる必要があります。

合名・合資・合同会社の社員権(持分)

合名会社・合資会社・合同会社の社員たる地位は「持分」と呼ばれるため、合名・合資・合同会社のことを持分会社といいます。

被相続人がこれら持分会社の社員であった場合には、その社員の地位(持分)や社員権(持分権)が相続されるのかが問題となります。

相続財産該当性

持分会社の場合、社員の死亡は退社事由とされています(会社法607条1項3号)。社員の死亡と同時に、社員の地位が失われるのです。

被相続人の死亡によって地位・権利が消滅するため、持分会社の持分は、相続財産にならないのが原則です

ただし、会社の定款で、相続人に持分が承継される旨が定められている場合には、持分・持分権も相続財産に含まれ、相続人に相続されます(会社法608条1項)。

相続人が複数人いる場合(共同相続)

上記のとおり、定款の定めによって持分・持分権が相続財産に含まれる場合があります。

持分・持分権も、単なる金銭債権ではないため、相続開始によって当然に共同相続人に分割承継されることはなく、遺産分割が終わるまで共同相続人全員での準共有になると解されています。

そのため、遺産分割によって持分の具体的な帰属が確定するまで、相続人は持分権を行使できません。また、複数の相続人が持分を取得した場合でも、権利行使する代表者を1人決めて、持分権を行使する必要があります(会社法608条5項)。

持分払戻請求権の取扱い

定款に定めがなく、被相続人の死亡によって持分が消滅した場合、相続財産には含まれません。

もっとも、死亡退社によって持分を失う代わりに持分の払戻請求権が発生します(会社法611条1項)。この持分払戻請求権は、相続財産に含まれます

ただし、必ずしも金銭による払い戻しに限られていないため、持分払戻請求権は、分割承継ではなく、遺産分割が終わるまで共同相続人間の準共有になると解されています。

そのため、この持分払戻請求権も、遺産分割によって具体的な帰属を確定させなければ、権利を行使できません。

民法上の組合員たる地位

民法上の組合とは、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約束することによって効力を生じる契約(組合契約)に基づく団体のことです(民法667条)。

会社の社員ではありませんが、類似の問題として、民法上の組合の組合員たる地位・組合員権も相続財産に含まれるのかも問題となります。

相続財産該当性

民法上の組合の場合、持分会社と同様に、組合員の死亡は組合脱退事由とされています(民法679条1号)。

被相続人が亡くなると組合員の地位もなくなるため、民法上の組合員たる地位・組合員権は相続財産に含まれません

出資金払戻請求権の取扱い

民法上の組合の場合も、組合員の死亡により地位が消滅する代わりに死亡脱退による出資金払戻請求権(民法681条)が発生します。

この民法上の組合における出資金払戻請求権は相続財産となります

この組合出資金払戻請求権は、純粋な金銭債権であり、可分債権の性質を有しています。そのため、共同相続の場合、相続開始によって当然に共同相続人の相続分に応じて分割承継されると解されています。

共同相続人は、遺産分割をしなくても、各自でそれぞれの相続分に応じて、持分の払戻を請求できます。

株式など社員たる地位の探し方

前記のとおり、株式や有限会社の社員の地位などは相続されます。そのため、相続が開始されたら、被相続人が会社の社員となっていたかを調べなければいけません。

以下では、株式などの社員の地位をどのように探せばよいのかについて説明します。

遺品や郵便物の中に関係書類があるかを調べる

相続財産(遺産)の調査の基本は、遺品のチェックです。遺品を確認して、社員権の証券・証書や会員証などがないかを探します

会社から株主総会の招集通知や報告書などが送られている場合や、証券会社から報告書が送られているもあります。遺品のほか、郵便物のチェックも必要です。

また、株取引をしていた場合は、証券会社から書類やメールが送らせていることもあるので、あわせて確認します。

被相続人の預金通帳や取引履歴を調べる

被相続人の通帳に、信託銀行や証券会社との入金または出金がないか調べましょう。通帳がない場合は、銀行やインターネットバンクから取引履歴を取り寄せて、確認します。

預金の通帳や取引履歴から、株取引が見つかるケースは少なくありません。

なお、通帳や取引履歴から、株式以外の財産や負債が見つかることは多いので、取寄せておいた方がよいでしょう。

証券保管振替機構(ほふり)に開示請求する

証券保管振替機構(通称「ほふり」)とは、「社債、株式等の振替に関する法律」に基づき、株式や投資信託など電子化された有価証券の振替や制度の運営を行っている組織です。

法定相続人は、証券保管振替機構に、被相続人が上場している株式や投資信託を取引していた証券会社の情報を開示するよう請求できます。これにより、被相続人の株式が判明するケースもあります。

ただし、証券保管振替機構で調べられるのは、証券会社だけです。具体的な証券口座の番号などは、別途、証券会社に照会しなければいけません、

また、上場していない株式や社員の地位は、証券保管振替機構では取り扱っていないため、すべての社員の地位が判明するわけではありません。

とはいえ、何の手がかりもない場合には、有効な手段です。費用(約6,000円)はかかりますが、試す価値はあるでしょう。なお、開示請求の手続は、下記リンク先ページを参照してください。

オーナー社長の場合

オーナー社長だった場合は、会社の書類を調べます。確定申告書などの会社の書類を確認すれば、株式や社員の地位が記載されていることがあります。

また、会社関係者や取引をしていた税理士に問い合わせるなどして、社員権の内容を確認します。

「相続される」からといって安心は禁物です。特に株式会社の場合、遺産分割が終わるまでは株式が準共有状態となり、独断で議決権を行使できません。会社の重要事項(役員選任など)が決められず、経営が麻痺するおそれがあります。

会社を継ぐ場合、早急な遺産分割協議が必要です。

社員権の相続手続の流れ

被相続人が会社の社員であった場合、相続手続をしなければならないケースがあります。被相続人がオーナー社長であった場合や、投資として株取引をしていた場合などでよく問題となります。

以下では、被相続人が社員であった場合の一般的な相続の進め方について説明します。

相続財産に該当するか否かのチェック

前記のとおり、会社・法人の形態によっては、社員の地位・社員権が相続財産に該当しないこともあるので、相続財産かどうかの確認が必要です。

ただし、社員本人の死亡によって出資の払い戻しが可能な場合、払戻請求権が相続財産になるケースがあるので、その点の確認も必要でしょう。

会社に問い合わせる

社員権がある(または可能性がある)ことが判明したら、社員権の対象である会社に問い合わせて、社員本人か亡くなったことを伝え、相続に必要な手続や書類を確認します。

投資として株取引をしていた場合は、証券会社に連絡します。

問い合わせをすると、相続を証明するための書類の提出を求められるのが通常です。例えば、以下のような書類です。

相続関係を証明するための書類
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 身分証明書コピー

会社によって必要な手続や書類が異なる場合があるため、必ず連絡をしておきましょう。

単独相続の場合

単独相続の場合は、社員の地位がある会社や証券会社に問い合わせて社員権や持分払戻請求権が判明したら、そのまま相続の手続を進めます。

相手方の指示に従って、株主名簿の書き換えなどの手続を進めてください。

社員の地位・社員権の共同相続の場合

共同相続の場合、社員の地位・社員権を共同相続人がそれぞれ単独で行使できません。遺産分割が必要です

まずは共同相続人間で話し合い(遺産分割協議)、社員の地位・社員権が誰にどの程度の割合で帰属するのかを確定させます。

話し合いが上手くいかない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停審判で決めることになります。

遺産分割が完了した後、共同相続人がそれぞれ社員の地位・社員権の相続手続を行います。

持分払戻請求権の共同相続の場合

持分払戻請求権も、基本的には、社員の地位・社員権と同じです。まずは遺産分割で誰にどの程度の割合で帰属するのかを確定させた上で、相続の手続を行うことになります。

ただし、前記のとおり、民法上の組合の出資金払戻請求権は、相続が開始すると各共同相続人に相続分に応じて分割承継されます。

そのため、民法上の組合の場合は、遺産分割をしなくても、共同相続人は、各自の相続分に応じて組合に出資金の払い戻しを請求できます

相続税の申告・納付

投資信託を相続した場合、相続税の申告や納税が必要です。相続税の納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った時から10か月です。

もし遺産分割が終わっていない場合は、いったん法定相続分で計算した金額を申告・納付して、遺産分割後に更正や修正申告をすることになります。

たとえば、上場株式は時価で評価されるものの、非上場株式や持分は純資産価額方式などで評価されるため、相続税の申告手続や金額計算はかなり複雑です。

社員の地位を相続した場合の相続税の手続は、税理士や税務署に相談して進めた方が良いでしょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

民法と資格試験

民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。

そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。

これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。

とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
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参考書籍

本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。

逐条解説 改正相続法
著者:堂薗幹一郎など 出版:商事法務
民法改正に対応した逐条解説書。相続を扱う実務家向けですが、持っていると何かと便利です。立法担当者や現役裁判官による著書であるため、内容に信頼性があります。

資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。

民法VI 親族・相続 (LEGAL QUEST)第8版
著者:前田陽一ほか  出版:有斐閣
家族法全体の概説書。条文・判例から書かれているので、学習の早い段階から利用できます。情報量もあるので、資格試験の基本書として十分でしょう。

親族・相続(伊藤真試験対策講座12)第4版
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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