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遺産分割審判とは?審判分割のメリット・デメリットや手続を解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

Q
遺産分割審判とは、どのような手続?
A

遺産分割審判とは、家庭裁判所の裁判官が、共同相続人の主張・立証をもとに遺産分割の内容を決定する手続です。遺産分割協議・調停を経ても話がつかなかった場合に利用する裁判所の手続です。審判で遺産分割をすることを「審判分割」といいます。

このページでは、遺産分割審判・審判分割について、わかりやすく説明します。

このページで説明していること
  • 遺産分割審判・審判分割とは何か
  • 遺産分割審判のメリット・デメリット
  • 遺産分割審判における判断の仕方・効力
  • 遺産分割審判と遺産分割調停の関係
  • 遺産分割審判の手続の流れ
  • 調停を経ずに遺産分割審判を申し立てる際の手続
  • 遺産分割審判に対する不服申立て
  • 遺産分割審判に関するよくある質問・Q&A
  1. 遺産分割の手続
  2. 遺産分割審判・審判分割とは
  3. 遺産分割審判のメリット
    1. メリット1:遺産分割に決着がつく
    2. メリット2:法律に基づく分割になる
  4. 遺産分割審判のデメリット
    1. デメリット1:当事者の希望に沿わないケースも多い
    2. デメリット2:法律の専門的知識や経験が必要になる
  5. 遺産分割審判における判断の仕方
    1. 遺産の範囲
    2. 遺産の評価
    3. 具体的相続分の判断
      1. 特別受益・寄与分の主張の期間制限に注意
      2. 補足:法定相続分とは
    4. 遺産分割の方法
  6. 遺産分割審判の効力
    1. 遺産分割審判の効力発生時期
    2. 遺産分割審判後の訴訟との関係
    3. 債務名義としての効力
  7. 調停せずに遺産分割審判を申し立てられるか
  8. 遺産分割審判の手続
    1. ステップ1:遺産分割の準備をする
      1. 遺言の調査
      2. 相続人などの調査
      3. 相続財産の調査
    2. ステップ2:遺産分割協議を行う
    3. ステップ3:協議が調わなかった場合、遺産分割調停を行う
    4. ステップ4:話がまとまらない場合、遺産分割調停が不成立になる
    5. ステップ5:手続は遺産分割審判へ移行する
    6. ステップ6:家庭裁判所で遺産分割審判の審理が行われる
    7. ステップ7:家庭裁判所が遺産分割審判(決定)を告知する
    8. ステップ8:遺産分割審判が確定する
    9. ステップ9:各自で相続手続を行う
  9. 調停を飛ばして審判を申し立てた場合の手続
    1. 遺産分割審判の申立権者(申立人)
    2. 遺産分割審判の申立て先
    3. 遺産分割審判の費用
    4. 遺産分割審判を申し立てる際の必要書類
      1. 共通の必要書類
      2. 相続関係などを証明する書類
      3. 主張書面や遺産(相続財産)に関する書類
    5. まずは遺産分割調停を申し立てた方が無難
  10. 遺産分割審判に不服がある場合の手続
  11. 遺産分割審判に関するよくある質問
    1. 遺産分割審判の手続は一般に公開される?
    2. 遺産分割審判には必ず出席しなければならない?
    3. 他の共同相続人と顔を合わせる?
    4. 遺産分割審判はどのくらいの期間がかかる?
  12. 民法と資格試験
  13. 参考書籍

遺産分割の手続

相続人が複数人いる共同相続の場合、相続財産(遺産)は、共同相続人全員の共有または準共有になるのが原則です(遺産共有民法898条1項)。

この遺産共有を解消し、相続財産の具体的な帰属を確定させるには、共同相続人全員で「遺産分割」を行う必要があります(民法906条)。

遺産分割は、まず裁判外で共同相続人全員で話し合います(遺産分割協議)。

話がつかない場合や非協力的な共同相続人がいるため話し合い自体できない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停で、裁判官・調停委員を交えて話し合うことになります。

これら、遺産分割協議や調停をしても話がつかない場合は、家庭裁判所の遺産分割審判の手続で決着をつけることになります

遺産分割審判・審判分割とは

民法 第907条

  • 第1項 共同相続人は、次条第1項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
  • 第2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。

引用元:e-Gov法令検索

遺産分割審判とは、共同相続人の主張やそれを裏付ける証拠をもとに、家庭裁判所が遺産分割の内容を決定する手続です。審判で遺産分割することを審判分割といいます。

遺産分割協議や調停と異なり、話し合いではなく、裁判所が法律に基づいて決定するのが遺産分割審判です。話し合いで解決できなかった場合にとる最後の手段です。

遺産分割審判では、家庭裁判所が当事者の意思に拘束されることなく、後見的な立場から合目的的に裁量権を行使して具体的に分割を形成決定します(最大判昭和41年3月2日)。

遺産分割審判のメリット

遺産分割審判には、以下のようなメリットがあります。

メリット1:遺産分割に決着がつく

遺産分割審判までいくのは、共同相続人間でかなり激しく争われているケースです。それぞれかなり疲弊しているはずです。

長い争いに決着をつけられるのが、遺産分割審判の一番のメリットです。

※厳密に言うと、この遺産分割審判にも不服を申し立てられます。不服申立てがされると、高等裁判所(さらには最高裁判所)で遺産分割審判の是非について争われることになります。

メリット2:法律に基づく分割になる

遺産分割審判は、裁判所が法律に基づいて決める手続です。共同相続人の希望を何でも取り入れることはありません。

相続分も、遺言で指定があればその指定相続分で、なければ法定相続分で具体的相続分が決められます。また、遺産分割方法も遺言で指定があれば、指定された方法で決定します。

法律に基づいて決めるため、ある意味では審判が最も公平に遺産分割が決められます

遺産分割審判のデメリット

遺産分割審判には、以下のようなデメリットもあります。

デメリット1:当事者の希望に沿わないケースも多い

遺産分割審判は、あくまで法律に基づいて遺産分割を決めるため、共同相続人の希望に沿った内容になるわけではありません

遺産分割協議や遺産分割調停であれば、話し合いであるため、ある程度各自の希望が取り入れられるかもしれません。

しかし、遺産分割審判では法律に基づいて決めるため、希望がまったく取り入れられない可能性もあります。

デメリット2:法律の専門的知識や経験が必要になる

遺産分割審判では、各共同相続人が、自ら法的主張と証拠を提出しなければいけません。

遺産分割協議や調停では、話し合いであるためそれほど厳密な主張や立証が求められないこともあるでしょう。しかし、遺産分割審判では、適切な法的主張や立証ができなければ、不利益を受ける可能性があります

遺産分割審判の場合は、特に弁護士に依頼することをお勧めします。

遺産分割審判における判断の仕方

遺産分割審判では、法律に基づいて判断が下されます。

遺産の範囲

遺産分割審判の場合、対象となる財産は、「遺産分割時に存在する遺産共有となる相続財産」です。

遺産分割協議や調停であれば、本来遺産分割の対象にならない財産(例えば、可分債権相続財産からの果実など)でも、共同相続人全員の合意で遺産分割の対象にできます。

しかし、遺産分割審判では、何を遺産分割の対象とするのかも、法律に基づいて判断されます。そのため、調停では遺産分割の対象にするかどうかが話し合われていた財産でも、審判では判断の対象外になるのが原則です。

ただし、遺産分割審判の手続において共同相続人全員が対象に含めることを合意した財産については、本来対象外のものでも、審判の対象に含まれることはあります。

遺産の評価

遺産の評価方法は、法律で決まった方法があるわけではありません。財産によって異なります。そのため、共同相続人から提出された査定書や鑑定書をもとに、裁判所が評価額を決めます

遺産分割審判で鑑定が実施されている財産については、鑑定結果が採用されるのが通常です。

また、どの時点で遺産を評価するのかは、法律で明確に決められているわけではないものの、判例・通説に従って「遺産分割時」を基準時として評価されるのが原則です。

ただし、遺産分割時を基準時とすると共同相続人間で著しい不公平が生じる場合は、例外的に遺産分割時以外の時点(相続開始時など)を評価の基準時とすることもあります。

具体的相続分の判断

遺産分割審判では、民法における相続分の定めどおりに決定されるのが原則です。

裁判所も、具体的相続分に即した共同相続人間の均衡を考慮して、相続分に従った分割が行われなければならないとする方針を採用しています(最高裁事務総局家庭局「昭和42年3月開催家事審判官会同概要」)。

そのため、遺言により相続分が指定されている場合はその指定相続分で、指定がない場合は法定相続分で、具体的相続分が決められるのが通常です。

なお、もちろん特別受益寄与分の主張に法的根拠が認められれば、具体的相続分の判断において考慮されます。

特別受益・寄与分の主張の期間制限に注意

特別受益とは、共同相続人の一部が被相続人から受けた遺贈、婚姻・養子縁組のためや生計の資本としての贈与のことです(民法903条1項)。

また、寄与分とは、被相続人の事業への労務提供・財産上の給付、被相続人の療養看護などの方法によって被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人の特別の寄与を金銭的に評価したもののことです(民法904条の2第1項)。

遺産分割審判で特別受益や寄与分が認められると、それらに応じて各共同相続人の相続分に変動が生じます。

ただし、この特別受益や寄与分は、相続開始から10年を経過するまでの間に家庭裁判所に遺産分割調停または審判を申し立てないと、主張することができなくなります(民法904条の3)。

もし特別受益や寄与分を主張したいと考えているのであれば、早めに手続を進めて、相続開始から10年を経過してしまわないように気を付けましょう。

補足:法定相続分とは

前記のとおり、遺産分割審判では、遺言で相続分の指定がある場合は指定相続分が採用されますが、指定がない場合は、民法で定められた法定相続分が採用されます

法定相続分は、同順位の共同相続人間では按分(頭割り)になります。例えば、相続人として亡くなった人(被相続人)の子が3人いたら、法定相続分は各3分の1ずつになります(民法900条4号本文)。

ただし、血族相続人(子、直系尊属、兄弟姉妹)とともに配偶者も相続人となる場合には、法定相続分は以下のように決められます(民法900条1~3号)。

相続人の構成法定相続分
配偶者と子が相続人の場合配偶者が2分の1
子が2分の1
配偶者と直系尊属が相続人の場合配偶者が3分の2
直系尊属が3分の1
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合配偶者が4分の3
兄弟姉妹が4分の1

遺産分割の方法

遺産分割審判では、遺産分割方法も遺言による指定を優先します。遺言で遺産分割方法が指定されていればその指定された方法で分割が決定されます

遺産分割方法の指定がない場合は、以下の順序で方法を検討するものと考えられています(大阪高決平成14年6月5日など)。

遺産分割審判における遺産分割方法の検討順序
  1. 現物分割
    遺産の現物をそのまま分ける方法。最も基本的な分け方
  2. 代償分割
    共同相続人の一部が遺産を取得する代わりに、他の共同相続人に代償金を支払って調整する方法
  3. 換価分割
    遺産を換価して、換えたお金を分ける方法
  4. 共有分割
    あえて遺産を共有のままにしておく方法。例外的な手段

遺産分割審判の効力

家庭裁判所による遺産分割審判(決定)が確定すると、原則として覆せません

共同相続人は、遺産分割審判で決められた内容に従ってそれぞれ遺産を取得し、各自で名義変更や回収などの相続手続を進めることになります。

遺産分割審判の効力発生時期

家庭裁判所により遺産分割審判が下された場合、告知した時ではなく「確定」した時に効力が発生します

遺産分割審判の確定時期は、誰も不服申立て手続をしないまま、審判書が共同相続人全員に届いてから2週間が経過した時です。

遺産分割審判後の訴訟との関係

既判力とは、同一当事者間における裁判の通用力または拘束力です。具体的に言うと、前の裁判で確定した判断と異なる主張や判断が、後の裁判で行えなくなる効力が生じます。

遺産分割審判には、この既判力がありません

そのため、遺産分割審判をした後に民事訴訟で審判と矛盾する内容の判決が下された場合、審判のうち判決と矛盾する部分は効力を失います(前掲最大判昭和41年3月2日)。

例えば、遺産分割審判確定後に、遺産と思われていた土地が実は別の人の物であったとする民事訴訟の判決が下されたとします。

この場合、遺産分割審判には既判力がないので、審判のうち、その土地を遺産として扱っている部分は効力がなくなります。

債務名義としての効力

確定した遺産分割審判書は「債務名義」になります。債務名義とは、私法上の給付請求権の存在や範囲などを公的に証明する文書のことです。債務名義があれば、強制執行などの民事執行手続を行うことができます。

そのため、遺産分割で決められた約束を守らない共同相続人がいる場合、訴訟などをしなくても、すぐに強制執行できます。

例えば、遺産分割審判で代償金を支払うことが決められた相続人が期日までに代償金を支払わなかった場合、代償金を受け取るべき相続人は、強制執行をして代償金を支払うべき相続人の財産を差し押さえることができます。

ただし、強制執行するには、地方裁判所で手続をする必要はあります。

調停せずに遺産分割審判を申し立てられるか

遺産分割協議が整わなかった場合、家庭裁判所の手続を利用できます。家庭裁判所の手続とは、遺産分割調停と遺産分割審判です。

遺産分割の場合、審判する前に必ず調停しなければならないとするルール(調停前置主義)の適用がありません。そのため、協議が失敗に終わったら、調停ではなくいきなり審判を申し立てることも可能です。

ただし、いきなり遺産分割審判を申し立てたとしても、家庭裁判所の判断で、調停に移行させられるのが通常です。

特別な事情のない限り、調停へ切り替えるための審査や手続の時間が余分にかかるだけです。まずは遺産分割調停を申し立てる方が良いでしょう。

遺産分割審判の手続

前記のとおり、遺産分割協議が上手くいかなかった場合は、まず調停を申し立てるのが一般的です。以下では、まず調停を申し立てた場合の遺産分割審判の手続の流れについて説明します。

遺産分割審判の流れ
  • ステップ1
    遺産分割の準備をする

    実際に遺産分割を始める前に、誰が共同相続人なのか、遺産には何があるのか、遺言の有無や内容を調査しておきましょう。

  • ステップ2
    遺産分割協議を行う

    準備が整ったら、共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人の全員と協議を行い、遺産分割について話しあいます。

  • ステップ3
    協議が調わなかった場合、遺産分割調停を行う

    遺産分割協議が上手くいかなかった場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、裁判官や調停委員を間に入れて話し合いを進めます。

  • ステップ4
    話がまとまらない場合、遺産分割調停が不成立になる

    これ以上話し合いを続けても調停成立の見込みがないと裁判所が判断した場合、遺産分割調停は不成立になり、終了します。

  • ステップ5
    手続は遺産分割審判へ移行する

    調停が不成立になると、手続は自動的に遺産分割審判に移行します。あらためて遺産分割審判を申し立てる必要はありません。

  • ステップ6
    家庭裁判所で遺産分割審判の審理が行われる

    遺産分割審判では、各共同相続人がそれぞれ法的主張と立証をしなければいけません。裁判官が共同相続人など当事者に質問する審問手続が実施されることもあります

  • ステップ7
    家庭裁判所が遺産分割審判(決定)を告知する

    当事者からの主張・立証が尽くされると、それらをもとに裁判所が遺産分割の内容を決定(審判)します。各共同相続人に審判書が送達されます。

  • ステップ8
    遺産分割審判が確定する

    審判書が共同相続人全員に届いてから2週間を経過するまでに、誰も不服申立てをしなかった場合、審判が確定します。

  • ステップ9
    各自で相続手続を行う

    確定した遺産分割審判で決められた内容に基づいて、それぞれの相続人が名義変更や登記、換金などの相続手続を行います。

ステップ1:遺産分割の準備をする

遺産分割を始める前に、いくつか調べておかなければならないことがあります。事前に調査しておいた方が、遺産分割協議での話し合いもスムーズに進められます。

具体的には、以下のようなことを調べておきましょう。

遺言の調査

遺言で何が定められているのかによって、遺産分割の内容も変わります。

遺産分割審判でも、遺言で定められている内容が基本となります。遺言が後から見つかると、紛争が大きくなってしまうおそれもあります。

また、遺言で遺贈を定めている場合、相続人の取り分が変わるだけでなく、包括遺贈であれば包括受贈者も遺産分割に参加してもらわなければいけません。

遺産分割をする前に、遺言書の有無や内容を必ず調べておきましょう

相続人などの調査

遺産分割には、以下の人が参加している必要があります。

遺産分割に参加しなければいけない人
  • 共同相続人
  • 包括受贈者
    遺言で包括遺贈(相続財産を取得する割合を遺贈するもの)が定められている場合は、その包括遺贈を受けた人(包括受遺者)の参加も必要です。
  • 相続分の譲受人
    相続人が相続分を譲渡している場合は、その相続分譲受人の全員が参加していなければなりません。

これらのうちひとりでも欠けていると、遺産分割は無効になってしまいます。遺産分割のやり直しになってしまわないように、事前に誰が共同相続人なのかなどを調べておきましょう

共同相続人を調べるには、被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を取り寄せて調査する必要があります。

相続財産の調査

前記のとおり、遺産共有になっている相続財産は、遺産分割する必要があります。また、遺産共有にならない相続財産も、話し合いをする上で重要な情報になることもあります。

そのため、すべての相続財産を事前に調べておきましょう

また、遺産分割では、個々の遺産の価額がどのくらいなのか、遺産の評価も重要な問題です。何があるかだけでなく、可能であれば査定もとっておきましょう。

ステップ2:遺産分割協議を行う

準備が整ったら、共同相続人(包括受遺者・相続分譲受人)に連絡して、遺産分割協議の話し合いを開始します

話し合いの方法には特に制限はありません。集まって直接話し合うのが望ましいですが、電話やWEB会議、書面のやり取りで協議を進める方法でも問題ありません。

話がついた場合には、紛争が再燃しないように書面(遺産分割協議書)を全員で取り交わしておきましょう。

ステップ3:協議が調わなかった場合、遺産分割調停を行う

遺産分割協議が上手くいかなかった場合は、まず家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます

遺産分割調停を申し立てる先は、相手方(他の共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人)の住所地を管轄する家庭裁判所です。相手方が複数人いる場合は、誰の住所地であっても自由に選べます。

遺産分割調停では、家庭裁判所の裁判官や調停委員を間に入れて話し合いを進めていくことになります。

遺産分割調停で話がついた場合は、家庭裁判所で、話し合いの結果をまとめた書面(調停調書)を作成してくれます。

遺産分割調停の詳しい手続や必要書類などは、下記リンク先を参照してください。

ステップ4:話がまとまらない場合、遺産分割調停が不成立になる

遺産分割調停でも話し合いが上手くいかないこともあります。

これ以上話し合いを続けても調停が成立する見込みがないと家庭裁判所が判断した場合、調停は不成立となり終了します

ステップ5:手続は遺産分割審判へ移行する

遺産分割調停が不成立になった場合、手続は自動的に遺産分割審判に移行します

調停終了後にあらためて遺産分割審判を申し立てる必要はありません。遺産分割審判の手続は、引き続き同じ家庭裁判所で実施されます。

調停終了時に裁判官から、次回からは審判で手続を行う旨が告げられ、次回までに各自が提出しなければならない書面や証拠を指示されるのが一般的です。

ステップ6:家庭裁判所で遺産分割審判の審理が行われる

遺産分割審判では、各共同相続人(包括受遺者・相続分譲受人)がそれぞれ主張・立証を行う必要があります。この主張・立証は、書面を提出して行います。

また、遺産分割審判では、審判官(裁判官)が当事者に直接質問する審問手続も実施されます。訴訟における当事者質問・証人尋問のような形で行うのが通常です。

なお、遺産分割審判の手続中でも、裁判所から和解案が提示され、それに基づいて和解が成立することもあります。和解が成立した場合は、審判手続は終了します。

ステップ7:家庭裁判所が遺産分割審判(決定)を告知する

当事者の主張・立証が尽くされると、その主張・立証や審問の結果をもとに、家庭裁判所が遺産分割の内容を決定(審判)します

審判の内容を書いた書面(審判書)は、当事者に送達されます。

ステップ8:遺産分割審判が確定する

遺産分割審判に不服がある場合は、審判書が当事者全員に届いてから2週間以内であれば不服申立て(即時抗告)できます。

審判書が当事者全員に届いてから2週間を経過するまでに、誰も不服申立てをしなかった場合、審判が確定します。確定した遺産分割審判は、原則として覆せません。

ステップ9:各自で相続手続を行う

遺産分割審判が確定したら、審判に従って、各共同相続人がそれぞれ個々の財産の名義変更や回収などの相続手続を進めます

相続手続では、審判書だけでなく、審判が確定したことの証明書(確定証明書)も必要になることが多いです。

審判が確定したら、審判をした家庭裁判所に申請して、確定証明書を取り寄せておきましょう

調停を飛ばして審判を申し立てた場合の手続

前記のとおり、協議が整わなかった場合、まずは調停を申し立てるのが一般的です。

もっとも、遺産分割には調停前置主義が適用されないため、いきなり遺産分割審判を申し立てることも可能ではあります。※ただし、前記のとおり、裁判所によって調停に付されることが多いです。

以下では、いきなり遺産分割審判を申し立てた場合の手続について説明します。

遺産分割審判の申立権者(申立人)

遺産分割調停も遺産分割審判も、家庭裁判所に手続を申し立てられるのは「遺産分割に参加しなければいけない人」です。具体的には、以下の立場の人しか申立てはできません。

遺産分割審判の申立権者
  • 共同相続人
  • 包括遺贈を受けた人(包括受遺者)
  • 相続人から相続分を譲り受けた人(相続分の譲受人)

遺産分割審判の申立て先

遺産分割審判を申し立てる裁判所は、「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」です。遺産分割調停と管轄が違うので、注意が必要です。

ただし、共同相続人全員で特定の家庭裁判所を管轄とすることを合意した場合は、その家庭裁判所に申し立てることができます

合意した家庭裁判所に申し立てる際は、合意したことの証明が求められるため、共同相続人全員で書面(管轄合意書)を作成しておく必要があります。

遺産分割審判の費用

遺産分割審判を申し立てる際も裁判費用がかかります。調停せずに遺産分割審判を申し立てる場合の費用は、以下のとおりです

費用項目金額
裁判手数料(収入印紙代)1200円(被相続人1人につき)
※申立書に収入印紙を貼付して支払います。割り印をしてはいけません。
予納郵券(郵便切手代)概ね3000~4000円分
※裁判所によって、金額や切手の種類の内訳の違いがあります。事前に確認しておきましょう。

遺産分割審判の申立て費用は、まず調停から申し立てた場合と同じです。

なお、まず調停を申し立てて審判に移行した場合は、最初の調停費用だけで済み、あらためて費用を払う必要はありません。

遺産分割審判を申し立てる際の必要書類

遺産分割審判を申し立てる際には、遺産分割調停を申し立てる場合と同様に、書面(遺産分割審判の申立書)を提出する方式で行います。

また、申立書のほかにも、各種の書類を提出しなければいけません。

共通の必要書類

遺産分割審判の申立てで必須となる書類には、以下のものがあります

必要書類入手先・備考
遺産分割審判の申立書自分で作成
書式は家庭裁判所でもらえる。インターネットからダウンロードも可能
事情説明書自分で作成
書式は家庭裁判所でもらえる。インターネットからダウンロードも可能
進行に関する照会回答書自分で作成
書式は家庭裁判所でもらえる。インターネットからダウンロードも可能
各種目録(当事者目録・相続財産目録)自分で作成
書式は家庭裁判所でもらえる。インターネットからダウンロードも可能
被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本被相続人の本籍地の市区町村役場
過去の戸籍は、当時の本籍地の市区町村役場
共同相続人全員の戸籍謄本各相続人の本籍地の市区町村役場
共同相続人全員の住民票(または戸籍の附票)各相続人の住所地の市区町村役場
※戸籍の附票は本籍地の市区町村役場
包括受遺者や相続分譲受人の住民票(または戸籍の附票)包括遺贈や相続分の譲渡がある場合
遺言書
※遺言がある場合
コピーを提出
※調停当日に原本を持っていく
相続関係を証明する書類下記を参照
相続財産に関する書類下記を参照
管轄の合意がある場合管轄合意書

相続関係などを証明する書類

被相続人の戸籍や相続人全員の戸籍だけでは相続人であることなどを証明しきれない場合は、以下のような書類の提出も必要となります

具体的なケース
被相続人の子の子が代襲相続人である場合亡くなった被相続人の子の出生から死亡までの一連の戸籍謄本
被相続人の「祖父母」が相続人である場合亡くなった被相続人の「父母」の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)
被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合・被相続人の父母の出生から死亡までの一連の戸籍謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)
被相続人の兄弟姉妹の子が代襲相続人である場合・亡くなった被相続人の兄弟姉妹の出生から死亡までの一連の戸籍謄本
相続分の譲渡があった場合相続分譲渡の契約書・合意書など
相続放棄をした人がいる場合相続放棄申述受理証明書
推定相続人の廃除相続欠格によって相続権を失った人がいる場合・相続廃除の審判書
・相続欠格の事情を示す書類・欠格者の欠格承認書など

代襲相続だけでなく、再代襲相続など複雑な事情がある場合は、さらに書類が必要となる場合があります。事前に裁判所や弁護士に相談しておいた方がよいでしょう。

主張書面や遺産(相続財産)に関する書類

遺産分割審判では、当事者が自ら法的な主張をして、その主張を裏付ける証拠を提出しなければいけません

そのため、申立書には、法的な主張も記載しておく必要があります。また、必要に応じて主張書面や他の当事者の主張に対する反論の書面も追加で提出することになります。

証拠は、主張の内容や相続財産によって異なります。例えば、以下のようなものがあります(以下が、すべてではありません。)

相続財産必要書類入手先・備考
銀行預金・郵便貯金相続開始時の残高証明書
必要に応じて通帳の写しや取引明細書
銀行や信用金庫
不動産不動産登記事項証明書
固定資産評価証明書
必要に応じて査定書や鑑定書
登記は、各地の法務局
固定資産評価証明書は、不動産所在地の市区町村役場
自動車自動車検査証
必要に応じて査定書
車検証はコピー
※調停当日に原本を持っていく
株式投資信託など株券・証書・証券の写し(ある場合)
残高証明書
残高証明書は証券会社

まずは遺産分割調停を申し立てた方が無難

音信不通や非協力的な相続人がいるため、まったく話し合いの目処がない場合に、調停を経ずにいきなり遺産分割審判を申し立てるケースはあります。

しかし、それでも話し合いの余地があるかもしれないため、前記のとおり、まずは調停に付されることになるのが通常です。

なお、あえて申立先を被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にするため、審判を申し立てることも考えられます。

ただし、この場合も、取り下げを求められたり、家庭裁判所の判断で移送されたりする可能性もあるため、確実ではありません。

審判から始めれば上手くいくとは限らないので、やはり遺産分割調停を先に申し立てる方が無難でしょう

遺産分割審判に不服がある場合の手続

遺産分割審判に不服がある共同相続人は、審判書が届いてから2週間以内であれば、高等裁判所に不服申立て(即時抗告)できます

即時抗告の手続を行う裁判所は、審判をした家庭裁判所を管轄する高等裁判所です。例えば、神戸家庭裁判所で遺産分割審判の手続をしていた場合は、大阪高等裁判所で抗告審が行われます。

高等裁判所では、遺産分割審判が妥当か否かを判断し、妥当と判断すれば抗告を却下し、妥当でないと判断すれば審判の変更や取消しを決定します。

なお、この高等裁判所の決定にも不服がある場合は、最高裁判所に不服を申し立てる(特別抗告または許可抗告)ことも可能です。

遺産分割審判に関するよくある質問

ここでは、遺産分割審判に関するよくある質問をQ&A形式で説明します。

遺産分割審判の手続は一般に公開される?

Q
遺産分割審判は、訴訟のように一般の傍聴人にも公開されますか?
A

いいえ。遺産分割審判の手続は非公開です。

訴訟は、裁判の公開の原則(日本国憲法82条1項、32条)に従って公開されます。そのため、訴訟手続は、一般の人も傍聴できます。

一方、遺産分割審判は、当事者のプライバシーに配慮して、非公開とされています。一般の人が傍聴することはできません。

※遺産分割審判を非公開とすることは、憲法82条、32条に反しないと考えられています(前掲最大判昭和41年3月2日)。

遺産分割審判には必ず出席しなければならない?

Q
相続人は、必ず遺産分割審判の手続に出席しなければいけない?
A

いいえ。遺産分割審判では、必ず出席しなければならないわけではありません。ただし、出席しない場合、裁判所に言い分を聞いてもらえず不利益を生じる可能性はあります。

遺産分割審判は、調停と違って、常に共同相続人全員が出席しなければならないわけではありません。誰かひとりでも出席していれば、手続は進められます。

ただし、出席しないと、自分の主張や立証を採用してもらえません。それにより、最終的な決定(審判)で、不利益を被る可能性があります。

もし遠方であるため出席が難しい場合は、電話で参加することも可能です。あらかじめ裁判所に相談しておいた方が良いでしょう。

また、弁護士に依頼すれば、代わりに出席してもらえます。

他の共同相続人と顔を合わせる?

Q
遺産分割審判では、他の共同相続人と顔を合わせることになる?
A

はい。遺産分割審判では、個別に話を聞く方式ではなく対審(全員同席して審理を受ける方式)であるため、他の共同相続人と同席して手続を行う機会が調停よりも多いです。

遺産分割調停では、基本的に裁判官や調停委員が、各共同相続人から個別に話をする交互審尋の形で手続が進みます。そのため、共同相続人同士が互いに顔を合わせる機会は少ないです。

他方、遺産分割審判では、交互審尋ではなく、対審です。法廷に出席当事者が全員集まって手続をするため、他の共同相続人と顔を合わせる機会が多くなります

遺産分割審判はどのくらいの期間がかかる?

Q
遺産分割審判が終わるまで期間はどのくらい?
A

事案によって違いますが、概ね1年です。ケースによっては2年近くまたはそれ以上かかることもあります。

遺産分割審判の期間がどの程度になるかは、事案によって異なります。相続財産が多かったり、争点が複雑であったりすると、時間がかかります。

そのため一概には言えませんが、遺産分割審判が終わるまでの期間は、概ね1年ほど、早くても半年はかかるでしょう。ケースによっては2年以上かかることもあります。

遺産分割の協議・調停・審判すべてだと数年単位になることもあります。

とは言え、特に相続人間で争いのないような普通の相続の場合は、そもそも審判にまで行かず話し合いで解決するでしょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

民法と資格試験

民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。

そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。

これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。

とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
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参考書籍

本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。

逐条解説 改正相続法
著者:堂薗幹一郎など 出版:商事法務
民法改正に対応した逐条解説書。相続を扱う実務家向けですが、持っていると何かと便利です。立法担当者や現役裁判官による著書であるため、内容に信頼性があります。

資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。

民法VI 親族・相続 (LEGAL QUEST)第8版
著者:前田陽一ほか  出版:有斐閣
家族法全体の概説書。条文・判例から書かれているので、学習の早い段階から利用できます。情報量もあるので、資格試験の基本書として十分でしょう。

親族・相続(伊藤真試験対策講座12)第4版
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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