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預金・貯金は相続されるか?相続財産(遺産)該当性や払戻方法を解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

Q
銀行預金や郵便貯金は相続される?
A

はい。銀行預金や郵便貯金(を払い戻す請求権)は相続財産に含まれるので、相続人に相続されます。ただし、相続人が複数人いる場合(共同相続)は、遺産分割をする必要があります。

このページでは、銀行預金や郵便貯金が相続財産に含まれるのかについて説明します。

このページで説明していること
  • 預金・貯金は相続財産に含まれるか?
  • 相続人が複数人いる場合(共同相続)の遺産分割の要否
  • 遺産分割する前に預貯金を払い戻す方法
  • 相続財産の預金・貯金の探し方・相続手続の流れ
  • 口座名義人と口座の実質的管理者が異なる場合(名義預金の問題)

預金・貯金は相続財産に該当するか?

民法 第896条

  • 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

引用元:e-Gov法令検索

一般に、金融機関に預け入れているお金は、預金・貯金と呼ばれます。

法的にいうと、銀行預金や郵便貯金は現金(いわゆる「タンス預金」)そのものではなく、金融機関に預貯金の払い戻しを請求できる権利(預貯金払戻請求権)です。

この金融機関に預け入れている預金や貯金を払い戻しできる権利(預貯金払戻請求権)は、誰でも行える権利であるため、被相続人の一身に専属するものではありません。

そのため、預金・貯金(払戻請求権)は、相続財産に含まれます

相続財産に含まれる以上、被相続人が有していた預貯金は相続人に相続されて受け継がれます。

相続人が複数人いる場合の預貯金債権の帰属

相続人が1人しかおらず、遺言もない場合であれば、相続開始により、預金・貯金(預貯金債権)はすべてその相続人に帰属します。

他方、相続人が複数人いる場合(共同相続)は、預貯金が各共同相続人にどのように帰属するのかが問題となります

共同相続の場合に預金・貯金が各共同相続人にどのように帰属するのかについては、分割承継と考える見解と共同相続人全員の準共有となると考える見解があります。

分割承継説

共同相続が開始すると、相続財産は共同相続人全員での共有または準共有になるのが原則です(遺産共有。民法898条)

ただし、金銭債権のような可分債権は、遺産共有にならず、遺産分割を待たずに、相続開始により当然に、共同相続人各自の相続分に応じて分割承継されると考えられています。

預金・貯金を払い戻す権利も金銭債権です。そのため、可分債権のルールに従い、預貯金も、相続が開始したら、各共同相続人の相続分に応じて当然に分割承継されると考えられていました

実際、最高裁判例でもかつては、預貯金債権は分割承継されると判断されていました(最三小判平成16年4月20日等)。

遺産分割対象説(準共有説)

預貯金は分割承継されるとする見解を変更した最高裁判例が、最大判平成28年12月19日です。

上記の判例は、預金・貯金は、預貯金債権については、他の可分債権と異なり、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるものではなく、遺産分割の対象になると判示しました。

この判例からすると、相続人が複数人いる場合、預金・貯金(預貯金債権)は、相続が開始すると、共同相続人全員に準共有的に帰属すると解することになるでしょう。

準共有とは、個々の預貯金債権を共同相続人全員で有していることを意味します。そのため、共同相続人の一部だけで預貯金を払い戻すことは原則としてできません。

この預貯金債権の準共有状態を解消し、具体的な相続分を確定させるためには、遺産分割が必要となります。

現在の実務の運用

現在では、前記の判例に従って、預金・貯金は、遺産分割をして具体的な帰属先が決まるまで、共同相続人全員の準共有として扱われます

そのため、共同相続人全員の同意がない限り、預貯金の払い戻しはできないのが原則です。

最高裁判例では、以下の預貯金種別について遺産分割の対象になると判断しています。

預貯金に関する最高裁判例
  • 銀行の普通預金(前掲最大判平成28年12月19日)
  • 郵便局の通常貯金(前掲最大判平成28年12月19日)
  • 郵便局の定期貯金(前掲最大判平成28年12月19日)
  • 信用金庫の定期預金(最一小判平成29年4月6日
  • 信用金庫の定期積金(最一小判平成29年4月6日)

なお、上記以外の種別の預貯金債権も、基本的に遺産分割の対象になると考えておいて問題ないでしょう。

遺産分割前における預貯金の払戻しの可否

相続人がひとりしかいない場合、その相続人が払い戻し手続をするだけです。

しかし、前記のとおり、相続人が複数人いる場合(共同相続)、預金・貯金は遺産分割するまで、共同相続人の準共有になります。そのため、共同相続人の一部だけで、勝手に払い戻しすることはできないのが原則です。

とは言え、遺産分割するまでに、葬儀費用や資金が必要となるケースはあります。共同相続の場合に、遺産分割する前に預貯金を払い戻すには、以下の方法をとる必要があります

共同相続人全員の同意を得る

最も単純な方法は、預金の払い戻しについて共同相続人全員の同意を得ることです。共同相続人全員から同意書をもらって所定の手続を行えば、遺産分割前でも払い戻しできます。

共同相続人間で対立がないような場合には、この方法が一番穏便でしょう。

遺産分割前の預貯金仮払い制度を利用する

民法 第909条の2

  • 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

引用元:e-Gov法令検索

共同相続人全員の同意がないと、金融機関側は払戻し請求に応じてくれないのが通常です。とは言え、資金が必要となるケースはあります。

そこで、改正民法(2019年7月1日から施行)では、各共同相続人は、相続開始時における預貯金債権額の3分の1に自身の法定相続分を乗じた金額(ただし、上限は150万円。)までなら、それぞれ単独で預貯金債権を行使できるものとされました(民法909条の2前段)。

預貯金払い戻しの効力

上記の預貯金債権一部行使(仮払い)制度に基づいて預金・貯金を払い戻した場合、その払戻額を遺産の一部分割によって取得したものとみなすことになります(民法909条の2後段)。

なお、特別な事情があり、急ぎ民法909条の2の上限を超える金額の払戻しをしなければならないような場合などには、遺産分割前の預貯金債権仮分割の仮処分(家事事件手続法200条3項)を利用することになるでしょう。

遺産である預金・貯金の探し方

預貯金をまったく持っていない人はあまりいないと思います。そのため、相続で必ずと言ってよいほど問題となる財産は、預貯金でしょう。

探し漏れがあると、遺産分割をした後に、新たに発覚した預金について改めて遺産分割しなければいけなくなるので、よく探しておきましょう。

例えば、以下のような方法で、被相続人が持っていた預貯金を探すのが一般的です。

遺品を確認する

遺産調査の基本は、遺品の確認です。以下のようなものが遺品に含まれていないかチェックしてください

預金・貯金に関連する遺品
  • 預金通帳・キャッシュカード
  • 金融機関から届いている郵便物
  • 金融機関から送信されている電子メール
  • 金融機関のスマホアプリ

最近は、通帳のないインターネットバンキングも多いので、パソコンやスマートフォンを調べておく必要があります。

また、相続開始後に金融機関から郵便物が届く場合もあるため、定期的に確認しておいた方がよいでしょう。

各種の書類を調べる

金融機関からの直接の書類がなくても、他の取引の書類に預金口座が記載されていることもあります

例えば、物やサービスを購入する場合、代金の引き落とし口座を売買契約書などに記載することがあります。水道光熱費の契約書や領収書・請求書などの書類もチェックしてみてください。

銀行に問い合わせる

被相続人が使っていたと考えられる金融機関があれば、その金融機関に問い合わせてみるのもひとつの方法です。

例えば、金融機関から借入れすると、その金融機関で預金口座を開設することが多いです。もし、被相続人が銀行や信用金庫から借入れをしていた場合、その金融機関で口座を開設している可能性があります。

預金・貯金の相続手続の流れ

前記のとおり、預金・貯金(預貯金払戻請求権)は、遺産分割が必要です。

預金・貯金が遺産(相続財産)に含まれている場合、以下のような流れで相続手続を進めるのが一般的です。

金融機関に連絡する

遺産に預貯金があることが判明したら、口座を開設している銀行・信用金庫などの金融機関に連絡します。また、あわせて相続手続の進め方を聞いて、必要書類を取り寄せます。

預金名義人が亡くなったことを知ると、金融機関はその預貯金口座を凍結し、入出金できないようにします。

一部の共同相続人や親族が勝手に預金からお金を払い戻してしまうおそれのある場合は、特に急いで連絡した方がよいでしょう。

ただし、口座凍結されると、公共料金の引き落としなども止まってしまいます。被相続人の口座から公共料金を支払っている場合には、先に支払者を変更しておいた方がよいでしょう。

単独相続の場合

相続人がひとりだけであれば、遺産分割も必要ありません。そのまま口座の名義変更や解約・払い戻しの手続を進めることになります。

なお、亡くなった人(被相続人)の預金口座をそのまま相続人名義に変更できるかどうかは金融機関によります。あらかじめ確認しておきましょう。

共同相続の場合

相続人が複数人いる共同相続の場合は、遺産分割を行う必要があります

共同相続人の一部が前記の遺産分割前の仮払い制度を利用をしていた場合は、それも考慮に入れて、遺産分割をすることになります。

遺産分割では、相続開始時(被相続人が亡くなった時)の預金残高を基準に分配方法を決めるため、相続開始時の残高証明書や取引履歴を取り寄せておきましょう。

遺産分割の基本は、共同相続人間での話し合い(遺産分割協議)ですが、話がつかない場合には、家庭裁判所の手続を利用します。

家庭裁判所の手続には、裁判官や裁判所が選任した調停委員を間に入れて話し合う遺産分割調停と、共同相続人からの主張・立証をもとに裁判所が決める遺産分割審判があります。

金融機関での相続手続

単独相続の場合はその相続人が、共同相続の場合は遺産分割で預貯金を取得した相続人が各自で、口座の名義変更や解約払い戻し手続を行います

共同相続の場合は、代表者を決めて、その代表者が払い戻しをした上で各権利者に遺産分割に従って分配する方法を使うこともよくあります。

金融機関での相続手続には、以下のような書類の提出が必要になるのが一般的です。

金融機関の相続手続で必要となる書類
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 手続をする人の印鑑証明書(遺産分割協議の場合は全員の印鑑証明書)
  • 手続をする人の身分証明書
  • 遺産分割したことを証明できる書類
    • 協議の場合は、遺産分割協議書
    • 調停の場合は、家庭裁判所の調停調書
    • 審判の場合は、審判書・確定証明書

なお、必要書類は金融機関によって異なります。あらかじめ問い合わせをして必要書類を確認しておきましょう。

相続税の申告・納付

銀行預金や郵便貯金も相続税の課税対象です。相続税は、被相続人が亡くなった日(相続開始日)から10か月以内に申告・納付しなければなりません。

預貯金の場合、相続開始日の残高とその日までの利息の合計額が相続税の評価額になります。ただし、預金の種別によって異なる評価方法があるなど相続税の計算は複雑です。税理士に相談して進めた方がよいでしょう。

預金通帳・履歴の重要性

預金・貯金は、それ自体も相続財産として重要であることは言うまでもありません。しかし、相続においては、預金口座の通帳や取引履歴も重要です。

通帳や取引履歴それ自体が遺産として意味があるのではなく、通帳に記載されている取引の情報から、別の財産や負債が見つかることもよくあります。

例えば、通帳の記載から株式取引をしていたことや借金していたことなどが判明するケースも多いです。

金融機関に連絡する際は、残高証明書だけでなく、取引履歴も取り寄せておくと役立つ場合があります。

名義預金の問題

名義預金とは、実際の口座名義人とは異なる人が、預金口座に出損し、管理・利用している預金口座のことです。

口座の名義人が被相続人ではなかったとしても、実質的にみると被相続人の預金であると言える場合、相続財産に含まれ、相続人に受け継がれることがあります。

例えば、子の名義の預金口座を作って、被相続人が自分で入出金を管理し利用していた場合などです。

具体的にどのような場合に名義預金が相続財産に含まれるかについて明確な基準があるわけではありませんが、一般的には以下のような事情を総合的に考慮して判断することになるでしょう。

名義預金が相続財産に含まれるかどうかの判断基準
  • 口座開設の経緯・目的
  • 口座に入金していた人(出捐者)は誰か
  • 口座の管理・利用者は誰か

名義預金が遺産に含まれるかどうかは、遺産分割で話し合うのが基本です。ただし、話がつかない場合は、別途、遺産確認訴訟を提起して決めることになります。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

民法と資格試験

民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。

そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。

これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。

とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
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参考書籍

本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。

逐条解説 改正相続法
著者:堂薗幹一郎など 出版:商事法務
民法改正に対応した逐条解説書。相続を扱う実務家向けですが、持っていると何かと便利です。立法担当者や現役裁判官による著書であるため、内容に信頼性があります。

資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。

民法VI 親族・相続 (LEGAL QUEST)第8版
著者:前田陽一ほか  出版:有斐閣
家族法全体の概説書。条文・判例から書かれているので、学習の早い段階から利用できます。情報量もあるので、資格試験の基本書として十分でしょう。

親族・相続(伊藤真試験対策講座12)第4版
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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