この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
- Q債務整理には、どのようなデメリットやリスクがある?
- A
債務整理をすると借金返済の問題を法的に解決できます。ただし、信用情報に事故情報(ブラックリスト)が掲載されることをはじめとして、いくつかのデメリットやリスクがあることも確かです。
| デメリット項目 | 任意整理 | 自己破産 | 個人再生 |
|---|---|---|---|
| ブラックリストの期間 | 完済から5年 | 裁判所の免責許可から5年 または、破産手続開始から7年 | 完済から5年 または、裁判所の再生手続開始から7年 |
| 財産の処分 | なし | あり | なし |
| 公的資格の制限 | なし | あり | なし |
| 転居の制限 | なし | あり | なし |
| 郵便物の転送 | なし | あり | なし |
| 市区町村役場への通知 | なし | 免責不許可になった場合のみ、あり | なし |
| 返済の継続 | あり(高額になることがある) | なし | あり |
| 利用条件の難易 | 緩やか | やや厳格 | かなり厳格 |
| 手続の複雑さ | 単純(交渉のみ) | やや複雑 | かなり複雑 |
| 手続の強制力 | なし(あくまで話し合い) | あり | あり |
このページでは、債務整理(任意整理・自己破産・個人再生)に共通するデメリットやリスクについて詳しく説明します。
- 債務整理に共通するデメリット・リスク
- 任意整理・自己破産・個人再生ごとのデメリット・リスク
- 債務整理を自分で行う場合のデメリット・リスク

債務整理のメリット
借金返済の問題を法律で解決する方法として、任意整理・自己破産・個人再生の3つの手段があります。これらによって借金問題を解決することをまとめて「債務整理」と呼んでいます。
債務整理をすると、借金返済の負担を軽減して、生活を再建できます。
このように大きなメリットのある債務整理ですが、デメリットも存在します。手続を選ぶ際は、メリットだけでなく、デメリットも考慮しなければいけません。
債務整理に共通するデメリットやリスク
前記のとおり、債務整理には借金返済の負担を減免できるメリットがあります。
とは言え、債務整理する以上、契約どおりに返済ができず、貸金業者や銀行などの債権者に負担を強いることも事実です。
そのため、債務整理をする場合、債務者側にもいくつかのデメリットが生じることがあります。
任意整理・自己破産・個人再生にはそれぞれ異なるデメリットがありますが、すべてに共通するデメリットもあります。共通のデメリット・リスクとしては、以下のものがあります。
- 信用情報に事故情報(ブラックリスト)が掲載され、一定期間、新たな借入れ・ローンを組むこと・クレジットカードの利用が非常に難しくなる
- 債務整理した銀行の預金口座が一時的に凍結される
- 保証人に迷惑をかける場合がある
- クレジットやローンで購入した商品を失う可能性がある
- 家族・同居人や勤務先に知られる可能性がある
このページの以下では、自己破産・個人再生・任意整理といった債務整理手続すべてに共通するデメリットやリスクについて説明します。
デメリット1:ブラックリストに登録される
債務整理をすることによって生じるデメリット・リスクとして代表的なものは、信用情報機関(JICC、CIC、KSC)の信用情報に事故情報(ブラックリスト)として登録されることです。
事故情報が掲載されると、一定の期間、新たに借り入れをしたり、ローンを組んだり、クレジットカードを利用したりすることが非常に難しくなります。
ブラックリストの意味や仕組み
債務整理の代表的なデメリットは「ブラックリストに登録されること」です。とはいえ、具体的にブラックリストとは何なのかを理解していないために、過剰にブラックリストを恐れる人が多いのも事実です。
そこで、まずブラックリストとは何か、信用情報とは何かについて説明します。
個人信用情報とは
個人信用情報とは、個人の金融における支払能力を判断するための情報です。
この個人信用情報は、信用情報機関において保有・管理されています。信用情報機関とは、金銭面での信用性に関する情報を蓄積する機関です。現在、信用情報機関には、以下の3つがあります。
信用情報の仕組み
現在では、貸金業者等はこの信用情報機関に必ず加盟しなければならないことになっています。貸金業者だけでなく、銀行等やローン会社も含め多くの金融機関がこの信用情報機関に会員として参加しています。
信用情報機関は、各会員からの情報提供をもとにして、個人の信用情報を蓄積しています。
例えば、どれだけの借入れをしているのか、延滞したことはないか、債務整理手続をしたことはないかなどの情報がこの機関に集約されていいます。
この信用情報機関に参加している金融機関は、信用情報機関から、取引の相手方となる個人の信用情報を取得することができます。そして、信用情報をもとに融資や貸付を行うかどうかを判断しているのです。
ブラックリストとは
債務整理をすると、当初の約束(契約)どおりに返済することはできません。契約を守れなかった以上、金銭的な面において、債権者からの信用を失うことは避けられないでしょう。
そのため、信用情報機関が保有する個人信用情報に、契約どおりの返済ができなかった事実が事故情報(異動情報)として掲載されます。
例えば、延滞や債務整理をしたことがあるなどといった、金銭面での信用を疑わせるような情報です。
この事故情報(異動情報)がいわゆるブラックリストです。
ブラックリストに登録されるとどうなるか?
金融機関は、貸付・融資に際して、信用情報機関に登録してある信用情報を確認して金銭面での信用を調査しています。
確認した信用情報に事故情報(ブラックリスト)が掲載されていれば、返済能力が不足していると判断して、審査を通さないでしょう。
そのため、債務整理をしてブラックリストに登録されると、新規で融資・貸付を受けること・クレジットカードでのショッピング利用・ローンを組むことなどが非常に困難になります。
ブラックリストに登録される期間
上記のとおり、債務整理するとブラックリストに登録されます。とは言え、一生登録され続けるわけではありません。事故情報は、以下の期間が経過すれば消されます。
| 債務整理の種類 | ブラックリストの登録期間 |
|---|---|
| 任意整理 | 完済から5年間 |
| 個人再生 | 完済から5年間 または、裁判所の再生手続開始から7年間 |
| 自己破産 | 裁判所の免責許可決定から5年間 または、裁判所の破産手続開始から7年間 |
影響1:新たな借金ができなくなる
債務整理をしたことにより信用情報に事故情報(ブラックリスト)が掲載されると、新規で借入れすることはできなくなります。
なお、ここで言う借入れは、金融機関からの借入れです。信用情報に関係がない親族などからの借金は含みません。とは言え、債務整理した後に借金を重ねるのは避けましょう。
影響2:新たにローンを組めなくなる
信用情報に事故情報(ブラックリスト)が掲載されることにより、新規で借入れできなくなります。ローンも借金であるため、債務整理すると各種ローンも利用できなくなります。
例えば、住宅ローンや自動車ローンも、ブラックリスト登録期間中は審査に通らないでしょう。また、他のショッピングローンや分割払い(割賦払い)購入も同様です。
影響3:クレジットカードを利用・作成できなくなる
債務整理の対象にしたクレジットカードは、カード会社によって強制解約されます。
また、金融機関は定期的にカード利用者の信用情報をチェックしているため、債務整理により事故情報(ブラックリスト)が掲載されると、対象にしなかったカードもいずれ利用停止になります。
そのため、債務整理すると、すべてのクレジットカードが使えなくなる可能性が高いです。
加えて、ブラックリストの登録期間中は、債務整理した後に新規でクレジットカードを作成することも非常に難しいでしょう。
影響4:クレジットカード払いがストップする
債務整理するとすべてのクレジットカードが使えなくなる以上、カードでの支払いも止まります。
必要なものは、債務整理する前に、支払方法を借金のない銀行の預金口座からの引き落としや振込用紙払い・コンビニ払いなどに変更しておきましょう。
例えば、以下のものはクレジットカード払いになっていることが多いので、注意が必要です。
- 公共料金:電気・ガス・水道など
- 通信費:携帯電話・スマートフォン・インターネットなど
- 保険料:生命保険・自動車保険・賃貸保証保険など
- オートチャージ:Suica・ETCカード
影響5:部屋を借りる際の賃貸保証に影響する場合がある
債務整理すると信用情報に事故情報(ブラックリスト)が掲載されます。
賃貸保証会社が信販会社系列の会社である場合、信用情報を確認していることがあります。そのため、家・部屋を借りる際、賃貸保証の審査に通らず借りれないケースがあります。
家・部屋を借りる際は、信販会社系列でない賃貸保証会社を選ぶか、通常の連帯保証人にしてもらうかなどの対処をする必要があります。
影響6:スマホ・携帯電話の分割払い購入ができなくなる
前記のとおり、債務整理すると信用情報に事故情報(ブラックリスト)が掲載されます。そのため、携帯電話やスマートフォンを分割払いで購入することが難しくなります。
ただし、一括払いで購入することは可能です。
また、あくまで購入代金の分割ができないだけなので、債務整理しても、通話料金の支払いに影響はありません。
ブラックリストを過剰に恐れるのは禁物
債務整理をする場合、ブラックリストに登録され、以後しばらくの間は借入れやカードでの買い物、あるいはローンを組んで何かを買うということはできなくなる覚悟は必要です。
もっとも、今後借入れ等ができないことと、支払いきれない借金を抱えて不安な毎日を過ごしていくこととを比べれば、どちらが自分にとって良いことなのかは、歴然です。
クレジットカードは使えなくても、デビットカードやプリペイドカードなどで不便を補うことも可能です。
借金ができなくなることは、生活を立て直すチャンスともいえます。デメリット・リスクとして捉えるかどうかは考え方一つです。
むしろ、自分で借入れをすることを自制しきれない人などは、強制的に借入れができなくない状態になったことを喜ばれることがあるくらいです。
闇金からの勧誘に注意
上記のとおり、債務整理をすると借入れができなくなります。ヤミ金は、そこにつけ込んできます。「債務整理をしているので普通の金融機関からは借りれないかもしれないけれど、うちならお金を貸してあげます」と勧誘してくるのです。
自己破産や個人再生の場合には債務者の氏名・住所が官報に掲載されるため、官報で氏名・住所を調べて、ダイレクトメールなどを送りつけてくる場合が多いです。
また、雑誌などに「債務整理後でも貸します」などと書いている場合もあります。ネットでも勧誘サイトがあるようです。
この闇金からの誘いには絶対に乗らないで下さい。せっかく債務整理をしているのにすべてが無になってしまうおそれがあります。また、平穏な生活を破壊される危険性もあります。くれぐれも気をつけましょう。
デメリット2:銀行口座を一時的に凍結される
銀行や信用金庫からの借金を債務整理した場合、その銀行・信用金庫の預金口座を一時的に凍結されます。
口座凍結されると、入出金が制限され、残高があると借金と相殺(自動的に残高を返済に充てた扱い)されてしまいます。
預金口座に給料や年金が入金された途端に相殺されたり、家賃や公共料金が引き落としされずに滞納になってしまったりするおそれがあります。
利用している預金口座の銀行や信用金庫などを対象に債務整理する場合は、事前に、以下の措置をとっておきましょう。
- 預金を引き出して残高をゼロ円にしておく
- 給料・年金などの振込先を、借金のない金融機関の預金口座に変更しておく
- 家賃・公共料金など重要なものの支払方法を、借金のない金融機関の預金口座からの引き落としや振込用紙払い・コンビニ払いに変更しておく
銀行預金口座の凍結に関する誤解
凍結されるのは、債務整理の対象にした金融機関の口座だけです。その他の金融機関の口座は凍結されません。
また、凍結は一時的な措置です。債務整理が終われば凍結は解除されます(終わる前に凍結解除されることもあります。)。
なお、債務整理の対象にした金融機関の預金口座であっても、一時的に凍結されるだけで解約されることはありません。
デメリット3:保証人に影響を及ぼす可能性がある
保証人・連帯保証人の付いている借金を債務整理すると、債権者は、その保証人や連帯保証人に対して代わりに支払うよう請求します。
保証人や連帯保証人に迷惑をかけることも、債務整理のデメリットやリスクのひとつと言えるかもしれません。
保証人・連帯保証人に請求される仕組み
借金をしている本人(主たる債務者)が債務整理をして支払いを停止すると、もはや約束どおりの返済はできません。
保証人や連帯保証人が付いている場合、債権者は、その保証人や連帯保証人に、債務者に代わって支払うよう請求できます。
また、債務整理すると、期限の利益が失われるのが通常です。期限の利益が失われると、分割払いの約束がなくなり、債権者は残額を一括で請求できるようになります。
そのため、債権者は、保証人・連帯保証人に対して、残額を一括で支払うよう請求することになります。
保証人・連帯保証人への迷惑を回避する方法
自己破産や個人再生では、すべての借金・債務が対象です。保証人・連帯保証人の付いている借金だけ外すことはできません。
そのため、自己破産・個人再生の場合は、ほぼ必ず保証人や連帯保証人に請求されます。
迷惑をかけるのを避けるためには、任意整理を選択し、保証人・連帯保証人の付いている借金だけ対象から外す方法をとる他ないでしょう。
保証人・連帯保証人のいる借金を債務整理する場合の注意点
上記のとおり、保証人・連帯保証人の付いている借金を債務整理すると、その保証人や連帯保証人に残額を一括請求されます。
ただし、債権者によっては、一括請求ではなく、従前と同じ分割払いでよいとしてくれる場合もあります。例えば、奨学金の債権者(日本学生支援機構など)は、分割払いでの請求の対応をしてくれます。
また、保証人・連帯保証人に対して一括請求はしたものの、分割払いの話し合いには応じてくれる金融機関も少なくありません。
とはいえ、保証人・連帯保証人に対して請求されてしまうことに変わりありません。
したがって、特に自己破産や個人再生をする場合には、あらかじめ、保証人や連帯保証人に事情を説明しておいた方がよいかもしれません。
デメリット4:クレジット・ローンで購入した商品を失う可能性がある
債務整理をすることによって生じるデメリット・リスクの1つとして、クレジットカードやローンで購入した物品を失う可能性があることが挙げられます。
例えば、自動車ローンを債務整理すると、ローンで購入した自動車はローン会社に引き揚げられて処分されます。また、住宅ローンを債務整理すると、住宅が競売にかけられて処分されます。
債権者による自動車などの物品の引き揚げ
クレジットやローンで物品を購入した場合、その物品について所有権留保が設定されるのが通常です。
所有権留保とは、分割での支払いがすべて終わるまでの間、物品の所有権をローン会社やクレジットカード会社のままにしておくことです。
そのため、債務整理したことにより、契約どおりにクレジットやローンが支払われなかった場合、クレジット会社やローン会社は、所有権留保を実行し、物品を引き揚げることができます。
物品の返還を受けたクレジット会社やローン会社は、その物品を第三者に売却して債務の残高に充当します。
例えば、オートローン(自動車ローン)を債務整理すると、所有権留保を実行され、自動車を引き揚げられてしまいます。
物品の引き揚げがされない場合
上記のとおり、クレジットカードやローンを債務整理すると、購入した商品を引き揚げられる可能性があります。もっとも、常に引き揚げられるわけではありません。
債権者の意向や方針によりますが、商品価値が低い場合や、取り外し工事などが必要なためコストが高くなる場合などには、商品を引き揚げないケースもあります。
なお、自動車は、走行可能な限り、ほぼ間違いなく引き揚げられます。
物品の引き揚げを避ける方法
物品の引き揚げをさけるために一番確実な方法は、任意整理を選択し、クレジットやローンの支払いだけ対象から外す方法です。
個人再生の場合は、契約内容によって、またはローンだけ対象から外して支払う内容の協定を(別除権協定)裁判所が許可してくれれば残せますが、かなりレアケースです。なお、家族や親族の援助を得られるのであれば、ローンだけ支払ってもらう方法(第三者弁済)があります。
自己破産の場合も、援助で支払ってもらう方法が考えられますが、商品自体に価値があると、結局は裁判所により処分されてしまうため、残すのは難しいケースが多いでしょう。
個人再生や自己破産の場合は、クレジットやローンの残額がある限り、商品引き揚げの可能性があると考えておいた方がよいでしょう。
住宅ローンの場合
住宅ローンを債務整理すると、自宅を競売にかけられて失うことになります。
任意整理の場合は、住宅ローンだけ外すことが可能です(そもそも住宅ローンを任意整理する意味はありません。)。個人再生も、住宅資金特別条項を利用すれば、住宅ローンだけ対象から外すことにより自宅を残せます。
ただし、自己破産の場合は、住宅ローンだけ外すことはできません。そのため、ほぼ必ず手放すことになります。
デメリット5:家族・同居人や勤務先に知られる可能性がある
債務整理をしたことを、できれば家族・同居人や勤務先に知られたくないと思うのは当然のことです。
債務整理をしていることを、家族・同居人や勤務先に知られる可能性は低いです。しかし、絶対に知られないとは言えません。
以下の場合は、家族・同居人や勤務先に知られる可能性があります。
- 家族・同居人や勤務先から借金をしているなど、債権者である場合
- 家族・同居人や勤務先が保証人や連帯保証人となっている債務について債務整理をする場合
- お金を貸しているなど、家族・勤務先や勤務先に請求権を持っている場合
- 債権者から訴訟や給料差押えをされた場合
- 自己破産や個人再生で官報公告を見られた場合



家族・同居人・勤務先から借金している場合
家族・同居人・勤務先から借金していても、任意整理であれば、家族や同居人だけ対象から外せば問題はありません。
他方、自己破産や個人再生では、すべての債権者を対象にしなければならないので、家族・同居人・勤務先だけ外すことはできません。
そのため、自己破産や個人再生の場合、家族・同居人・勤務先も債権者となるため、裁判所から通知され、債務整理していることが知られます。
家族・同居人・勤務先が保証人・連帯保証人の場合
家族・同居人・勤務先(の人)が借金の保証人や連帯保証人になっている場合でも、任意整理であれば、その借金だけ外すことが可能です。
一方、自己破産や個人再生の場合は、対象を選べません。そのため、貸主である債権者は、保証人や連帯保証人に支払いを請求します。
自己破産や個人再生の場合は、貸主が保証人である家族・同居人・勤務先に請求することで借金を払っていないことを知られ、そこから債務整理していることもバレる可能性があります。
家族・同居人や勤務先に請求権がある場合
家族・同居人や勤務先に請求権があることは、任意整理では問題になりません。問題となるのは、自己破産・個人再生の場合です。
家族・同居人や勤務先にお金を貸していたり、何らかの請求ができる権利を持っていると、その請求権も財産として扱われます。
自己破産の場合、破産管財人が家族・同居人や勤務先に支払いを請求するので、債務整理していることを知られます。
個人再生の場合、請求権の金額が借金をどれくらい減額できるのかに影響するため、返済を請求しなければならなくなるケースもあります。そのようなケースでは、家族・同居人や勤務先に事情を説明しなければならないことがあります。
債権者から訴訟や給料差押えをされた場合
債務整理していることを知られるケースとして多いのは、債権者から訴訟や給料差押えをされた場合です。
債権者が借金返済を求めて訴訟を提起すると、裁判所から自宅に訴状や呼出状が送達されます。この訴状等を家族や同居人が見てしまうと、借金を支払っていないことを知られ、そこから債務整理していることも知られる可能性があります。
また、訴訟で判決が下されると、債権者は強制執行できるようになります。
特に、給料を差し押さえられると、裁判所から勤務先に、差押命令書が送達されます。これにより、借金を支払っていないことを知られ、そこから債務整理していることも知られる可能性があります。
自己破産や個人再生の官報公告を見られた場合
自己破産や個人再生の場合、国の機関紙である官報に、手続をしていることが氏名・住所と一緒に掲載され、公に告知(公告)されます。
官報を見られたら、自己破産や個人再生していることを知られます。
とは言え、この官報を逐一チェックしている人はほとんどいないでしょう。そのため、官報から家族・同居人・勤務先に知られる可能性は低いです。
ただし、定期的に官報をチェックする業種(保険会社や警備会社など)が勤務先の場合は、知られる可能性があります。
なお、任意整理では官報公告されないので、官報から知られる可能性はありません。
債務整理のデメリットに関する誤解・間違い
債務整理にはいくつかのデメリットがあることは確かですが、間違った情報も多いです。正しい理解が必要です。
例えば、以下のような誤解があります。
家族には直接影響しない
債務整理によってブラックリストや口座凍結などの影響を受けるのは、債務整理をした本人だけです。家族に直接の影響はありません。
そのため、家族名義のクレジットカードが使えなくなったり、ローンを組めなくなったり、口座が凍結されたりするようなことはありません。
ただし、本人が債務整理で財産を失うことになったため、生活に不便が生じるなど、間接的な影響が家族に及ぶことはあり得ます。
戸籍や住民票に債務整理したことは記載されない
債務整理したからといって、戸籍や住民票に債務整理した情報が記載されることはありません。
自己破産や個人再生でも、官報公告はされますが、戸籍・住民票への記載はされません。
勤務先に知られても解雇されない
債務整理したことを解雇の理由にはできません。そのため、債務整理したことだけを理由に解雇されることはありません。
ただし、勤務先を債権者として債務整理した場合は、解雇理由になる可能性はあります。
また、自己破産の場合には公的資格の制限があるため、公的資格を使わなければ仕事ができない職種の勤務先であった場合も、解雇理由に該当するリスクはあります。
大家に知られても家・部屋を追い出されない
債務整理したことだけを理由に、家・部屋の賃貸借契約を解約することはできません。そのため、債務整理しても、家・部屋を追い出されることはありません。
ただし、家賃をちゃんと支払っていることが条件です。家賃を数か月滞納している場合は、賃貸借契約を解約されて退去を求められることはあります。
個々の手続のデメリット・リスク
これまで述べてきたものは債務整理全般に共通するデメリット・リスクですが、これら以外にも、個々の債務整理ごとにそれぞれ異なるデメリット・リスクがあります。
債務整理共通のデメリットやリスクだけでなく、自己破産・個人再生・任意整理にそれぞれ固有のデメリット・リスクも考慮に入れた上で、どの手続を選択すればよいのかを検討する必要があります。
自己破産に固有のデメリット・リスク
債務整理の方法のうちで最も制限が多いのは、自己破産です。そこで、まず自己破産のデメリットやリスクから説明します。
自己破産は、裁判所に免責を許可してもらうこととにより、借金全額を帳消しにしてもらえる強力な効果がある反面、以下のようなデメリットが存在します。
- 生活必需品等を除く財産を処分しなければならない
- 自己破産をしたことが官報に公告される
- 破産手続中は公的な資格を使った仕事ができなくなる(例えば、警備員、生命保険外交員、宅建士、各種士業など)
- 破産手続中は住居を自由に移転できなくなる
- 破産手続中は郵便物が破産管財人によって調査される
- 免責不許可になった場合には、自己破産したことが市町村役場に通知される
個人再生(個人民事再生)に固有のデメリット・リスク
個人再生は、裁判所に再生計画認可を決定してもらうことにより、財産を残したまま、借金の大幅な減額や分割払いへの変更が可能となる手続です。
この個人再生には、自己破産のような財産処分、資格制限、居住制限、郵便物の転送などの制限がありません。もっとも、以下のようなデメリットがあります。
- 個人再生をしたことが官報に公告されること
- 利用のための要件が厳格であること
- 手続きが複雑なうえに自ら進めていかなければならないこと
任意整理に固有のデメリット・リスク
任意整理は、弁護士が債権者と交渉して返済条件を軽くしてもらう裁判所を介しない方法です。
そのため、任意整理は自己破産や個人再生ほどの効果はないものの、デメリットは他の手続に比べてかなり少ないです。
自己破産のような財産処分、資格制限、居住制限、郵便物の転送などの制限はなく、デメリットも、以下のものくらいです。
- 返済を継続していかなければならないこと
- 返済額が高額になる場合があること
- 強制力がないため、任意整理困難な貸金業者などがいると失敗に終わる可能性があること
任意整理・自己破産・個人再生のデメリットまとめ
任意整理・自己破産・個人再生の主要なデメリットをまとめると、以下のとおりです。
| デメリット項目 | 任意整理 | 自己破産 | 個人再生 |
|---|---|---|---|
| ブラックリストの期間 | 完済から5年 | 裁判所の免責許可から5年 または、破産手続開始から7年 | 完済から5年 または、裁判所の再生手続開始から7年 |
| 財産の処分 | なし | あり | なし |
| 公的資格の制限 | なし | あり | なし |
| 転居の制限 | なし | あり | なし |
| 郵便物の転送 | なし | あり | なし |
| 市区町村役場への通知 | なし | 免責不許可になった場合のみ、あり | なし |
| 返済の継続 | あり(高額になることがある) | なし | あり |
| 利用条件の難易 | 緩やか | やや厳格 | かなり厳格 |
| 手続の複雑さ | 単純(交渉のみ) | やや複雑 | かなり複雑 |
| 手続の強制力 | なし(あくまで話し合い) | あり | あり |
デメリットの大きさは、メリットの大きさに比例します。借金の金額、収入、持っている財産など自分の状況に応じて、最適な債務整理手続を選びましょう。
「どの債務整理手続が最適かわからない」場合は、弁護士に相談するのが確実です。
自分で借金整理するデメリット
債務整理は弁護士に依頼するのがベストですが、必ず依頼しなければならないわけではありません。自分で債務整理することも可能です。
自分で債務整理すれば弁護士費用を抑えられるメリットがあります。
ただし、自分で債務整理する場合には、以下のようなデメリットもあります。
手間や時間がかかり過ぎる
債務整理するには、法律の知識が必須です。特に裁判手続である自己破産や個人再生には、かなりの専門的知識や経験が必要になります。
自分だけで行うとなると、一から法律を習得しなければならず、大変な手間や時間がかかります。
また、債権者とのやり取り、自己破産や個人再生であれば裁判所、破産管財人、個人再生委員とのやり取りが頻繁に必要となるため、さらに手間や時間を要します。
日常の生活・仕事をしながら、債務整理手続を一人で行うには、限界があるでしょう。
精神的な負担が大きい
自分で債務整理する場合、債権者、裁判所、破産管財人、個人再生委員、場合によっては利害関係のある第三者に対応しなければなりません。
これらを自分で対応するのは、かなりの精神的負担です。特に、借金している立場で債権者と交渉するのは、大きな精神的負担を負う可能性があります。
取立ては止まらない
自分で債務整理する場合のデメリットとしては、取立てや督促が止まらないことも挙げられます。
弁護士に依頼すれば、受任通知の送付によって取立てはすぐき止まります。しかし、自分で債務整理する場合は、取立てを止めてもらえるわけではありません。
任意整理で話がつくまで、自己破産や個人再生の裁判所の手続が開始されるまで、取立ては止まりません。
取立て・督促を受けながら債務整理の準備を進めるのは、負担が大きいでしょう。
債務整理はやり直すのが難しい
債務整理は、一度失敗すると、やり直すのは難しくなります。いったん始めてしまうと、引き返しにくいのです。
2回目以降になると、債権者の対応も厳しくなり、任意整理が上手くいかない可能性があります。自己破産や個人再生では、裁判所の審査が厳しくなる上、前の手続から7年経過していないと法的な制限が課されることもあります。
そのため、とりあえず自分でやってみて上手くいかなかったときはまたやり直せばよいと考えて、債務整理を始めるのは危険です。
初めから弁護士に依頼しておけばもっとデメリットの小さな方法を選べたかもしれないと思われるケースもあります。
結論:弁護士に依頼することをお勧めします
上記のとおり、債務整理を自分でやると、時間的・物理的にも精神的にも多くの負担を生じます。また、万が一失敗した場合に、やり直しが難しいのもリスクです。
弁護士に依頼すれば物理的・精神的な負担はなく、失敗のリスクもなくなります。また、準備中も取立てを止められるため、早い段階で平穏な生活を取り戻せるメリットもあります。
債務整理する場合は弁護士に依頼することをお勧めします。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
弁護士の探し方
「債務整理をしたいけど、どの弁護士に頼めばいいのか分からない」
という人は多いのではないでしょうか。
現在では、多くの法律事務所が債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、債務整理の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
- 相談無料(無料回数制限なし)
- 全国対応・休日対応・メール相談可
- 所在地:東京都台東区
- 相談無料(無料回数制限なし)
- 全国対応・依頼後の出張可
- 所在地:東京都墨田区
- 相談無料
- 24時間対応・秘密厳守・匿名相談可能・メールフォーム・LINE相談可能
- 所在地:東京都千代田区
参考書籍
本サイトでも債務整理について解説していますが、より深く知りたい方のために、参考書籍を紹介します。
クレジット・サラ金の任意整理実務Q&A
編著:柄澤昌樹ほか 出版:青林書院
任意整理の実務書。任意整理だけでなく、債務整理全般について解説されています。若干古いため、アップデートは必要ですが、細かいところも拾えます。
破産実務Q&A220問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
破産実務を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。一般の方でも、本書があれば、破産実務のだいたいの問題や自分の場合どうなるのかを知ることができます。
個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。



