この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
- Q遺贈とは何?
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遺贈とは、遺言で自分の財産を他人に贈与することです。相続人だけでなく、相続人以外の第三者に遺贈することも可能です。この遺贈には、相続財産に対する取り分の割合を贈与する包括遺贈と、特定の財産を贈与する特定遺贈があります。
このページでは、遺贈とは何かについて、わかりやすく説明します。
- 遺贈とは
- 包括遺贈と特定遺贈、条件や手続を定めた遺贈
- 遺贈を利用するケース・注意点
- 遺贈の効力
- 遺贈の承認・放棄
- 受遺者と遺贈義務者の法律関係
- 遺贈と他の制度の比較

遺贈(いぞう)とは?
民法 第964条
- 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。
引用元:e-Gov法令検索
遺贈(いぞう)とは、遺言によって、他人に無償で財産の全部または一部を与える(贈与する)行為のことです(民法964条)。
相続人だけでなく、相続人以外の第三者に遺贈することも可能です。遺贈される人のことを「受遺者」といいます。
遺言は、相続財産を遺す人(被相続人)の意思を尊重する制度です。被相続人は、自由に遺言を作成できます(遺言自由の原則)。遺贈は、この遺言自由の原則を最も如実に具体化した制度と言えるでしょう。
遺贈の当事者
遺贈をした被相続人・遺言者のことを「遺贈者(いぞうしゃ)」と言います。他方、遺贈によって相続財産を与えられた人のことを「受遺者(じゅいしゃ)」と言います。
前記のとおり、相続人のみならず、第三者も受遺者とすることができます。また、受遺者が胎児であっても、出生した時は遺贈の受遺者となれます(出生擬制。民法965条、886条)。
なお、遺贈の内容を実現するために一定の手続きや行為をしなければならないこともあります。例えば、遺贈の目的物を引き渡す行為をしなければならない場合です。
このような場合に、遺贈に伴う手続きや行為を実行すべき義務を負う人のことを「遺贈義務者」と言います。
遺贈義務者は、遺言で反対の意思表示がされていない限り、遺贈の目的物や権利を相続開始時の状態で受遺者に引き渡しまたは移転する義務を負うものとされています(民法998条)。
遺贈の種類:特定遺贈と包括遺贈
遺贈には、「特定遺贈」と「包括遺贈」があります(民法964条)。
特定遺贈
特定遺贈とは、受遺者に与えられる目的物や財産的利益が特定されている場合の遺贈のことです。特定遺贈の場合、受遺者は特定財産の権利のみを与えられます。
例えば、相続財産にA・B・C3つの不動産がある場合に、そのうちのA不動産だけ遺贈するのが、特定遺贈です。
包括遺贈
包括遺贈とは、遺産の全部または一定割合で示された部分を受遺者に与える場合の遺贈のことです。
包括遺贈のうち与えられる遺産が全部の場合を「全部包括遺贈」と言い、一部割合部分のみの場合を「割合的包括遺贈」と言います。
包括遺贈の場合、受遺者は、相続人と同一の権利義務を有することになります(民法990条)。
遺産の権利だけでなく、それに伴う義務も包括受遺者に移転します。そのため、包括遺贈の場合、受遺者は被相続人の借金などの負債も引き継ぐことになります。
ただし、あくまで受遺者ですので、相続人になるわけではありません。受遺者には、相続人だけに認められる代襲相続や遺留分は認められません。
条件や手続を定めた遺贈
単に遺産を譲り渡すことだけを遺言に定めるだけでなく、一定の条件や手続などを定めて遺贈することもできます。
負担付遺贈
民法 第1002条
- 第1項 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
- 第2項 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
引用元:e-Gov法令検索
負担付遺贈とは、財産を譲り渡す代わりに、受遺者に一定の負担を課す遺贈の方式です。
例えば、長男に不動産を遺贈する代わりに、母親と同居して介護や面倒をみることを条件とするような遺贈も可能です。
ただし、受遺者が負う負担は、遺贈の目的財産の価額の範囲内に限られます(民法1002条1項)。
また、限定承認や遺留分侵害額請求によって遺贈財産の価額が減少した場合は、遺言で別段の意思表示がない限り、その分負担も減ります(民法1003条)。
遺贈義務者の指定
受遺者に遺贈するために財産の引き渡しなど一定の行為が必要となる場合に、その行為をする義務を負う人を遺言で決めておくこともできます。義務を負う人を遺贈義務者といいます。
遺贈義務者は、遺言で反対の意思表示がされていない限り、遺贈の目的物や権利を相続開始時の状態で受遺者に引き渡しまたは移転する義務を負います(民法998条)。
遺贈を利用するケース
遺贈は、相続財産を遺す人が自分の意思を相続に反映させることができる有力な手段です。例えば、以下のようなケースでは、遺贈を利用することがあります。
相続人以外の第三者に遺産を受け継がせたいケース
遺言であっても、民法で決められた人(法定相続人)以外の人を相続人にすることはできません。
相続人の取り分(相続分)を遺言で決めておくこと(相続分の指定)はできますが、第三者を相続人に加えることはできません。
例えば、法定相続人でない第三者のAがいる場合、遺言で「Aを相続人とする」と定めたとしても、その遺言は効力を生じません。
もっとも、事情によっては、法定相続人には財産を相続させたくない、あるいは、第三者に相続財産を譲り渡さなければならない理由があるケースもあるでしょう。
そのようなケースで利用されるのが、遺贈です。遺贈であれば、第三者に遺産を受け継がせることが可能です。
相続人の一部に遺産を集中させたいケース
例えば、家業を受け継いでもらう長男に、遺産の全部または多くを受け継がせたいようなケースもあるでしょう。
このようなケースでも、特定の相続人に遺贈して、遺産を集中させることが可能です。
ただし、特定の相続人に遺産を集中させる場合は、遺贈ではなく、特定財産承継遺言を利用することが多いでしょう。
自治体やNPOなどの団体に遺贈で寄付をしたいケース
前記の第三者への遺贈は、関わりのある個人や法人に遺贈をするだけでなく、自治体やNPO法人、学校などの団体に寄付をする場合に使われることもあります。
自分の財産を社会貢献のために使いたい場合、遺贈を利用して寄付する方法もあり得るでしょう。
遺贈する場合の注意点:遺留分
遺贈は便利な制度です。しかし、誰か特定の人に遺贈することにより、他の相続人の取り分は減ることになります。
取り分を減らされたのが、兄弟姉妹以外の相続人(子・直系尊属・配偶者)であった場合、遺留分の問題が発生するケースがあります。
遺留分とは
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人(子・直系尊属・配偶者)に保障されている最低限の取り分のことです(民法1042条)。
遺留分を侵害された相続人は、遺贈を受けた人(受遺者)に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます(遺留分侵害額請求。民法1046条1項)。
遺贈する場合の遺留分対策
前記のとおり、遺贈によって遺留分を侵害された相続人が、遺贈を受けた人に遺留分侵害請求をする可能性があります。遺贈することによって相続人間でトラブルが発生するかもしれません。
そのため、遺贈する際は、他の相続人の遺留分を侵害することになるのか否かも考えておかなければいけません。具体的には、以下のような方法があります。
- 事前に財産の価値を調べて、遺留分に相当する遺産を遺留分侵害額請求を行使しそうな相続人に遺贈し、その他を目的の相続人に遺贈する
- 遺言で、遺贈の目的を説明し、遺留分侵害額請求しないように添え書き(付言)をしておく(法的な拘束力はありません)
上記1の方法をとれるのであれば、確実です。ただし、都合よく遺産を分けられるとは限らないので、遺産の内容によっては難しいことも多いです。
上記2の添え書きは、法的拘束力がないため、あくまでお願いになってしまいますが、よく用いられる方法です。
不動産に関する権利を第三者に特定遺贈する場合の注意点
第三者に不動産に関する権利を特定遺贈することは可能ですが、以下の点には注意しておきましょう。
- 第三者である受遺者が単独で遺贈による所有権移転登記できない
他に相続人等がいる場合は、共同申請が必要となります。なお、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者との共同申請になります。 - 賃借権(借地権や借家権)の特定遺贈には、賃貸人の承諾が必要
賃借権を第三者に特定遺贈するには、賃貸人の承諾が必要です。ただし、借地借家法の適用がある借地権の場合は、賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可を得られれば、受遺者に受け継がせることが可能です(借地借家法19条1項)。 - 農地の所有権を遺贈するには、農地法3条の許可が必要
農地を第三者に特定遺贈するには、農地法3条で定める農業委員会の許可が必要です。
なお、相続人が受遺者である場合は、遺贈による所有権移転登記が可能です。
遺贈の効力
遺贈の遺言がある場合、遺言の効力が発生すれば遺贈も効力を生じます(民法985条1項)。具体的には、遺言者が亡くなった時(相続開始時)に、遺贈の効力が発生します。
そのため、特定遺贈の場合、相続開始によって、受遺者は遺贈された遺産を取得します。
包括遺贈の場合、他に相続人も受遺者もいなければ、相続開始時にすべての遺産を包括受遺者が取得します。
一方、他に相続人や受遺者がいる場合は、遺産分割をして各自の具体的な相続分や遺産の帰属を確定させる必要があるのが原則です。
相続開始前に受遺者が死亡した場合
遺言者の生存中(相続開始前)に受遺者が死亡した場合、遺贈は失効します(民法994条1項)。条件付きの遺贈の場合は、相続開始時に受遺者が生存していても、条件成就前に死亡した場合、遺贈は失効します(民法994条2項)。
遺贈が失効した場合、遺言で別段の定めがない限り、遺贈の目的となっていた遺産は相続人に帰属します(民法995条)。
なお、相続開始前に受遺者が死亡していたとしても、遺贈について代襲相続が発生することはありません。
遺贈財産が相続財産でなかった場合
遺贈によって譲り渡せるのは、相続財産(遺産)です。遺贈の目的である財産が、相続財産に含まれないものである場合、遺贈は効力を有しないのが原則です(民法996条本文)。
ただし、「相続財産に含まれるか否かにかかわらず遺贈の目的とする」旨が遺言で明示されていた場合には、遺贈として効力を有します(民法996条ただし書き)。
遺贈の目的物が相続開始前に失われた場合の物上代位
相続開始前に、遺贈の目的物が滅失・変造・占有喪失した場合、遺贈も効力を失うのが原則です。
もっとも、遺言者が遺贈財産の滅失などを原因として、第三者に対して何らかの償金を請求できる権利を取得するケースがあります。
例えば、遺贈の目的物であった物を第三者が損壊したため、第三者に対して損害賠償請求権が発生するようなケースです。
この場合、遺贈は効力を失わず、遺言者が有していた第三者に対する償金請求権を遺贈したものと推定されます(民法999条1項)。
また、遺贈の目的物が他の物と付合または混和したことにより、遺言者が合成物や混和物の所有権を取得するケースでも、遺贈は効力を失わず、遺言者が有する合成物や混和物の所有権を遺贈したものと推定されます(民法999条2項)。
相続開始前に遺贈の目的債権が弁済された場合の物上代位
物に限らず、債権も遺贈することが可能です。相続開始前に遺贈の目的とした債権が弁済されて消滅すると、遺贈も効力を失うのが原則です。
ただし、弁済により受け取った金銭や物が遺産の中に残っている場合は、その残っている財産を遺贈したものと推定されます(民法1001条1項)。
例えば、売買契約に基づく目的物引渡請求権を遺贈の目的とした場合、すでに遺言者が生前に目的物の引き渡しを受けていたときは、その目的物自体を遺贈したものと推定されます。
金銭債権を目的とする遺贈
金銭債権とは、金銭の給付を目的とする債権のことです。要するに、お金を請求できる権利です。この金銭債権も遺贈することができます。
遺産の中に遺贈の目的とした金銭債権に相当する金銭がなかったとしても、遺贈は有効です(民法1001条2項)。金銭債権を譲り受けた受遺者が、自分で債権を回収すればよいだけだからです。
遺贈の承認と放棄
前記のとおり、相続が開始すると遺贈も効力を生じます。しかし、遺贈を拒否したいと考える受遺者もいるでしょう。
そのため、受遺者は、遺贈を受けるか受けないかを自由に選択できます。遺贈を受ける場合を遺贈の承認、遺贈を受けない場合を遺贈の放棄といいます。
特定遺贈と包括遺贈の放棄の違い
民法 第986条
- 第1項 遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
引用元:e-Gov法令検索
特定遺贈の場合は、相続開始後であればいつでも放棄できます(民法986条1項)。具体的には、他の相続人や受遺者全員に対して、遺贈を放棄することを通知します。
他方、包括遺贈の場合、受遺者は相続人と同じ扱いになります(民法990条)。
そのため、包括遺贈の場合は、自分のための包括遺贈がされていることを知った時から3か月以内に、家庭裁判所で包括遺贈放棄の手続をしなければいけません(民法938条、915条)。
この包括遺贈の放棄の手続は、相続人の相続放棄の手続とほとんど同じです。下記リンク先も参照してください。
遺贈の放棄の効力
民法 第986条
- 第2項 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
引用元:e-Gov法令検索
遺贈を放棄した場合、相続開始時にさかのぼって、遺贈を受けなかった扱いになります(民法986条2項)。遺贈放棄された場合、遺贈の目的であった財産は相続人に帰属します(民法995条本文)。
ただし、遺言で、受遺者が遺贈を放棄した場合の遺産の分け方などを指定していたときは、遺言に従うことになります(民法995条ただし書き)。
遺贈の承認・放棄の撤回
民法 第989条
- 第1項 遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない。
- 第2項 第919条第2項及び第3項の規定は、遺贈の承認及び放棄について準用する。
引用元:e-Gov法令検索
遺贈を一度承認または放棄した場合、受遺者は、撤回できないのが原則です(民法989条1項)。
ただし、以下の場合は、遺贈の承認や放棄の意思表示を取り消すことができます(民法989条2項、919条2項、3項)。
- 未成年者や成年被後見人が法定代理人の関与なく遺贈の承認・放棄をした場合(民法5条2項、9条)
- 遺贈の承認や放棄の意思表示に重要な錯誤があった場合(民法95条1項)
- 詐欺・強迫によって遺贈の承認・放棄をした場合(民法96条1項)
なお、これらの取消権は、「追認できる時から6か月」または「遺贈の承認または放棄の時から10年」を経過すると時効消滅して取り消せなくなります(民法989条2項、919条3項)。
受遺者と遺贈義務者の法律関係
遺贈によって、特定の義務を課されている人のことを遺贈義務者といいます。例えば、遺贈の対象となっている遺産を受遺者に引き渡す義務を課されているような場合です。
受遺者の権利
受遺者は、遺贈義務者に対して以下のような権利を持っています。
- 遺贈義務者に対して遺言の内容に従って義務を履行するよう請求できる
- 義務が弁済期未到来または条件未成就の場合は、遺贈義務者に担保を請求できる(民法991条)
- 義務の履行を請求できる時から、遺言で別段の意思表示がない限り、対象の遺産からの果実を取得できる(民法992条)
遺贈義務者の義務
遺贈義務者は、受遺者に対して以下のような義務を負担します。
- 受遺者に対して遺言の内容に従って特定の行為をする義務を負う
- 遺贈の対象である物または権利を、遺言で別段の意思表示がない限り、相続開始時の状態のまま受遺者に引き渡さなければならない(民法998条)
- 相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が民法996条ただし書きにより有効である場合、遺贈義務者は、その権利を取得して受遺者に移転しなければならない(民法997条1項)
- 相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が民法996条ただし書きにより有効である場合、権利を取得できなかいか、または取得に過分の費用がかかるときは、遺贈義務者は、遺言で別段の意思表示のない限り、受遺者に価額を弁償しなければならない(民法997条2項)
遺贈義務者の権利
遺贈義務者は、受遺者に対して遺言の内容どおりの義務を負いますが、以下のような権利も有しています。
必要費・有益費の償還請求権
必要費とは、目的物を管理・維持・保存するための費用のことです。遺贈義務者が遺贈の目的物のために相続開始後に必要費を支出した場合、受遺者に支払い(償還)を請求できます(民法993条1項、299条1項)。
また、有益費とは、目的物の価値を増加させるための費用です。遺贈義務者が遺贈の目的物について相続開始後に有益費を支出した場合も、受遺者に有益費の償還または増加した価額を請求できます(民法993条1項、299条2項)。
有益費の場合、有益費そのものの金額を支払うか、目的物が増加した価額を支払うかは、受遺者が決めることができます。
なお、遺贈義務者は、果実を収取するために支出した必要費も受遺者に償還を請求できますが、請求できる金額は、果実の価格を超えない限度までです(民法993条2項)。
受遺者に対する催告権
前記のとおり、受遺者は相続が開始した後いつでも遺贈を放棄できます。とは言え、いつまでも、承認するのか放棄するのかはっきりさせないでいると、遺贈義務者が手続を進められません。
そのため、遺贈義務者は、相当期間を定めて、遺贈を承認するのか放棄するのかを回答するよう、受遺者に催告できます(民法987条前段)。
もし受遺者が何も回答しなかった場合は、遺贈を承認したものとして扱われます。後からやはり放棄するとは言えません(民法987条後段)。
受遺者が相続開始後・遺贈の承認・放棄前に死亡した場合
前記のとおり、相続開始前に受遺者が亡くなった場合は、遺贈は失効します。他方、相続開始後に受遺者が亡くなった場合は、遺贈の効力は失われません。
相続開始後に受遺者が亡くなった場合、遺言で別段の意思表示がない限り、受遺者の相続人が、自分の相続権の範囲内で遺贈を承認または放棄できます(民法988条)。
遺贈の手続
遺贈で相続人や第三者に遺産を分け与えるまでの手続は、以下のような流れで進むのが一般的です。
- ステップ1遺言者:遺言書を作成する
遺贈するには、民法の方式に従って遺言書を作成しておく必要があります。
- ステップ2相続の開始:遺贈の効力発生
遺言者が亡くなって相続が開始すると、遺贈の効力も発生します。
- ステップ3遺言書の検認
保管制度を使っていない自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には、遺言書を家庭裁判所で検認してもらう必要があります。
- ステップ4遺贈の目的財産を受遺者に移転する
遺言の内容に従って、目的財産を受遺者に引き渡します。遺言執行者がいる場合は、遺言執行者が執行します。
以下、それぞれについて詳しく説明します。
ステップ1:遺言者が遺言書を作成する
遺贈するには、遺言を作成する必要があります。この遺言は、民法で定める方式に従って遺言書を作成しておかなければ効力を生じません(民法960条)。
遺言の方式には、以下の3つがあります。
秘密証書遺言には、あまりメリットがありません。遺贈をする場合は、自筆証書遺言または公正証書遺言の方式で遺言書を作成しておくことをおすすめします。
遺言執行者の指定
遺贈の遺言をする場合は、遺言執行者を指定しておいた方がよいでしょう。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現する行為をする職務を負う人のことです。遺言執行者がいれば、相続が開始した後、遺贈の内容を実現するための行為(遺言の執行)を行ってもらえます。
遺言執行者は、遺言で指定しておくことができます。あらかじめ遺言執行者になってもらいたい人を探して頼んでおき、遺言で指定しておけば、遺贈が実現する可能性が高くなります。
ステップ2:相続の開始:遺贈の効力の発生
前記のとおり、遺言者が亡くなって相続が開始すると、遺贈の効力も発生します。
特定遺贈の場合は、遺贈の効力発生によって、遺産分割を経ないでも、目的財産の権利が受遺者に移転します。
包括遺贈の場合、他に相続人等がいれば、その相続人と受遺者らが全員で相続財産を共有または準共有することになります(遺産共有。民法899条1項)。この共有を解消するためには、遺産分割をする必要があります。
ステップ3:遺言書の検認
遺贈を定めた遺言書が自筆証書遺言(法務局の自筆証書保管制度を使っていないもの)または秘密証書遺言であった場合、家庭裁判所で検認手続を行う必要があります。
検認とは、利害関係人に遺言の存在・内容を知らせるとともに、遺言書の形状・加除訂正の状態・日付・署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、その後の遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
この検認を行う前に、封印されている遺言書の封を開けてしまうと罰則(過料)を課されることもあります。相続開始後に遺言書を見つけたら、手を付けず、急いで検認手続を行いましょう。
なお、公正証書遺言や法務局での保管制度を利用している自筆証書遺言の場合は、検認は不要です。
ステップ4:遺贈の目的財産を受遺者に引き渡す
特定遺贈の場合は、遺言書に従って、遺贈の目的財産を受遺者に引き渡します。遺言執行者がいる場合には、遺言執行者が財産の引き渡しや登記の移転手続を行います。
他方、包括遺贈の場合は、相続人と同じように財産を受け継ぐことになります。受遺者のほかに相続人等がいれば、遺産分割をして包括受遺者の具体的な相続分や受け取る財産を決め、遺産分割に従って財産を受け継ぐことになります。
遺贈と他の制度や手続との比較
遺贈を理解するには、他の制度や手続と比較するのが効果的です。ここでは、遺贈と他の制度との比較を説明します。
遺贈と相続
相続は、亡くなった人(被相続人)が有していた一切の権利義務(相続財産)を、民法で定められた相続人に受け継がせる制度です。
特に遺言で決めておかなくても、被相続人が亡くなれば、当然に相続が開始されます。
他方、遺贈は、遺言で定めておかなければ効力を生じませんが、相続人以外の第三者にも相続財産を受け継がせることが可能です。
遺贈と死因贈与
遺贈によく似た制度として、死因贈与があります。死因贈与とは、贈与者の死亡を停止条件として、財産を贈与する契約です。
遺贈と死因贈与には、以下のような違いがあります。
| 比較項目 | 遺贈 | 死因贈与 |
|---|---|---|
| 法的性質 | 遺言による一方的意思表示 | 当事者間の契約 |
| 書面の要否 | 遺言書の作成が必要 | 不要(ただし、契約書を作成するのが通常) |
| 年齢の制限 | 15歳以上であれば可能 | 18歳以上であれば可能(未成年者の場合は法定代理人による代理・同意が必要) |
| 遺言者・贈与者による撤回 | 遺言の撤回は可能 | 負担付贈与や裁判上の和解の場合を除き、撤回は可能(書面による場合でも撤回可能) |
| 受遺者・受贈者による放棄 | 相続開始後に放棄できる | 放棄できない ただし、書面によらない贈与の場合は、受贈者による撤回が可能なケースがある |
遺贈と相続させる旨の遺言
相続させる旨の遺言とは、相続財産(遺産)を特定の相続人に対して「相続させる」と遺言することです。特定の遺産について相続させる旨の遺言をする場合は、特定財産承継遺言といいます。
この相続させる旨の遺言で財産を受け継がせることができるのは、相続人に限られます。第三者に相続させることはできません。他方、遺贈の場合は、第三者にも遺産を受け継がせることが可能です。
遺贈を受けた場合の税金
遺贈を受けた場合は、贈与税ではなく、相続税がかかります。また、通常の相続と、以下のような点で異なります。
- 配偶者・一親等の血族関係にある者以外の人への遺贈の場合、相続税に2割が加算される
- 第三者遺贈の場合、不動産取得税が発生することがある
- 相続人の場合、登録免許税は1000分の4であるが、第三者遺贈の場合は登録免許税が1000分の20になる
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この記事が参考になれば幸いです。
民法と資格試験
民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。
そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。
これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。
とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現
参考書籍
本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。
逐条解説 改正相続法
著者:堂薗幹一郎など 出版:商事法務
民法改正に対応した逐条解説書。相続を扱う実務家向けですが、持っていると何かと便利です。立法担当者や現役裁判官による著書であるため、内容に信頼性があります。
資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。
民法VI 親族・相続 (LEGAL QUEST)第8版
著者:前田陽一ほか 出版:有斐閣
家族法全体の概説書。条文・判例から書かれているので、学習の早い段階から利用できます。情報量もあるので、資格試験の基本書として十分でしょう。
親族・相続(伊藤真試験対策講座12)第4版
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。
資格試験の関連過去問
このページで確認した知識で、「遺贈」に関連する資格試験の過去問を解いてみましょう。
- 行政書士試験令和6年度問29
論点:相続と第三者(共同相続・遺産分割・遺贈・特定財産承継遺言・相続放棄)


