この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
- Q投資信託は相続される?
- A
はい。投資信託(に基づいて利益を受け取る権利)も相続財産(遺産)に該当するため、相続人に承継されます。
- 投資信託の基礎知識・投資家の権利
- 投資信託(受益権)は相続されるか?
- 相続開始後に入金された投資信託分配金の取扱い
- 相続財産に投資信託があるかどうかの探し方
- 投資信託の相続手続の一般的な流れ・相続税の申告や納付

投資信託とは
投資信託とは、多数の投資家が投資信託の販売会社(信託銀行)を通じて拠出した資金を、投資専門家(運用会社)が株式をはじめとする有価証券や不動産などに投資し、その投資運用によって得た利益を投資家に分配する金融商品です。
日本においては、法的な投資信託として、委託者指図型投資信託と委託者非指図型投資信託が認められています(投資信託及び投資法人に関する法律2条3項)。
現在では、いわゆる本格的な投資家だけではなく、一般個人でも投資信託で資産運用している人は少なくありません。そのため、投資信託の相続が問題となることも多いです。
投資信託の投資家の権利
投資信託の投資家には、受益権があります。
受益権とは、「信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利」のことです(信託法2条7項)。
簡単に言うと、投資信託における受益権とは、投資信託に基づく利益を受け取る権利や受託者(信託銀行など)に一定の行為を求める権利です。
具体的には、受益権には、以下のような権利があります。
- 収益分配金請求権
投資運用によって得た利益の分配を請求できる権利 - 償還金請求権
信託が終了した際に償還金を請求できる権利 - 換金請求権
投資信託を解約または受益証券買取りを請求して、中途で換金する権利 - 信託財産に関する帳簿書類の閲覧・謄写の請求権
- 重大な投資信託約款の変更のための書面決議の議決権
投資信託受益権の相続
前記のとおり、投資信託の投資家には、投資運用による利益の分配を受ける権利や、投資信託の解約等をして金銭を受け取ることができる権利などの財産的価値がある「受益権」が認められています。
投資信託受益権の相続財産該当性
投資信託の受益権は、収益分配や償還金を受けられる権利など財産的価値があり、被相続人の一身に専属する権利とはいえません。
そのため、投資信託(受益権)は相続財産(遺産)に含まれ、相続人に承継されます。
投資信託受益権を受け継いだ相続人は、投信運用による利益の分配を求めたり、投資信託を解約して償還金を受け取ったりできます。
共同相続の場合(遺産分割の要否)
相続人が複数人いる場合(共同相続)、遺産分割をせずに共同相続人がそれぞれ相続分に応じて承継するのか、遺産分割するまで共同相続人全員の準共有になるのかは、議論の分かれるところです。
投資信託受益権(収益分配請求権や償還金請求権)は、金銭債権です。可分債権である以上、相続の開始によって、遺産分割を経ずに、各共同相続人がそれぞれの相続分に従って分割承継するのが原則です。
しかし、判例では、以下の理由から、投資信託受益権は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないと判断されています(最三小判平成26年2月25日)。
- 投資信託受益権は、金額を単位するものではなく口数を単位としており、一単位未満での権利の行使が認められていない
- 投資信託受益権には、収益分配請求権や償還金請求権だけでなく、信託財産に関する帳簿書類の閲覧・謄写の請求権(投資信託及び投資法人に関する法律15条2項)等の委託者に対する監督的機能を有する権利のような可分債権でないものも含まれている
この判例により、実務では、共同相続の場合、投資信託(受益権)は、相続開始後に共同相続人全員での準共有となり、遺産分割によって最終的な帰属が決まるものとして扱われています。
相続開始後に入金された投資信託分配金
相続開始後に、被相続人の預貯金口座等に投資信託分配金(または償還金)が振り込まれる場合もあります。この相続開始後に入金された投資信託の分配金をどのように取扱うべきかも問題となるケースがあります。
この相続開始後に振り込まれた投資信託分配金・償還金を相続においてどのように扱うべきかについては、その分配金・償還金が相続開始前に発生していたものか否かによって分けて考える必要があります(ただし、結論的には変わりません。)。
相続開始前に発生していた分配金(未収分配金)
相続が開始した後に投資信託の分配金や償還金が入金されたものの、実際には、相続開始前にすでに権利としては発生しており、ただ受け取るのが相続開始後になっただけの場合(未収分配金)があります。
相続財産該当性
投資信託の未収分配金・償還金は、被相続人が相続開始時に有している権利です。そのため、未収分配金・償還金が相続財産に含まれることに争いはないでしょう。
そのため、未収分配金・償還金は相続人に相続されます。
共同相続の場合(遺産分割の要否)
未収分配金は、金銭債権です。原則どおりに考えると、相続開始によって当然に各共同相続人にそれぞれの相続分に応じて分割して承継されるはずです。
しかし、未収分配金も投資信託受益権の内容を構成するものです。後述するとおり、相続開始後に発生した分配金等も、受益権を構成するものとして分割承継されないと解されています(最二小判平成26年12月12日)。
相続開始前に発生していた未収分配金・償還金も、各共同相続人がそれぞれの相続分に応じて当然に取得できるものではないと解すべきでしょう。
そのため、未収分配金・償還金も、相続が開始すると共同相続人間での準共有になり、遺産分割によって最終的な帰属を決める必要があります。
相続開始後に発生した分配金
投資信託分配金や償還金自体が相続開始後に発生したものである場合も、基本的には、未収分割金・償還金と同じように考えることになります。
相続財産該当性
投資信託分配金の請求権が相続開始後に発生したものである場合、被相続人が相続開始時に有していた財産とは言えず、相続財産に含まれないようにも思えます。
実際、相続開始後に遺産である収益不動産から家賃収入が発生した場合、家賃収入は相続財産には該当せず、共同相続人それぞれの相続分に応じて分割承継されると考えられています。
しかし、判例は、投資信託の分配金や償還金の交付を受ける権利は受益権の内容を構成するものであり、遺産分割の対象になると判断しています(前掲最二小判平成26年12月12日)。
この判例によると、相続開始後に発生した分配金や償還金は、家賃収入とは違って、相続財産に含まれると考えることになるでしょう。
共同相続の場合(遺産分割の要否)
相続人が複数人いる共同相続の場合、判例(前掲最二小判平成26年12月12日)は、相続開始後に発生した投資信託の分配金や償還金が遺産である預金口座に振り込まれた場合、当然に共同相続人の相続分に応じて分割承継されるものではないと判断しています。
そのため、相続後に発生した分配金・償還金は、共同相続人間での準共有になり、遺産分割で具体的な帰属や相続分を確定させる必要があると考えられます。
ただし、遺産分割協議や調停では、あえて投資信託受益権として分けることはせず、単に預金の一部として扱って分割することも多いでしょう。
相続財産に投資信託があるかどうかを探す方法
被相続人(亡くなった人)が、遺言を遺していたり、生前に投資信託があることを具体的に告げていたりすれば、亡くなった後に投資信託を探すのは難しくないかもしれません。
しかし、被相続人が何も告げていなかったり、具体的な内容を教えていなかったりした場合は、相続人が投資信託があるかどうかを調べなければいけません。
探し方に決まりはありませんが、一般的には以下のような方法で投資信託の有無を調べることになるでしょう。
遺品や郵便物の中に関係書類があるかを調べる
被相続人が投資信託をしていたのかどうかわからない場合、遺品を調べて、証券会社や信託銀行などから受け取った書類(取引報告書や残高報告書など)がないかを探すことになります。
相続開始後に、証券会社や信託銀行などから書類が郵送されてきて、発覚することもあります。メールで連絡がくることもあるので、メールも確認した方が良いでしょう。
被相続人の預金通帳や取引履歴を調べる
被相続人の通帳に、信託銀行や証券会社との入金または出金がないか調べましょう。通帳がない場合は、銀行やインターネットバンクから取引履歴を取り寄せて、確認します。
預金の通帳や取引履歴から投資信託が見つかるケースは少なくありません。
なお、通帳や取引履歴から、投資信託以外の財産や負債が見つかることは多いので、取寄せておいた方がよいでしょう。
証券保管振替機構(ほふり)に開示請求する
証券保管振替機構(通称「ほふり」)とは、「社債、株式等の振替に関する法律」に基づき、株式や投資信託など電子化された有価証券の振替や制度の運営を行っている組織です。
法定相続人は、証券保管振替機構に、被相続人が上場している株式や投資信託を取引していた証券会社の情報を開示するよう請求できます。これにより、被相続人の投資信託が判明するケースもあります。
ただし、証券保管振替機構で調べられるのは、証券会社だけです。具体的な証券口座の番号などは、別途、証券会社に照会しなければいけません、
また、一部の投資信託は、証券保管振替機構では取り扱っていないものもあり、すべての投信信託が判明するわけではありません。
とはいえ、何の手がかりもない場合には、有効な手段です。費用(約6,000円)はかかりますが、試す価値はあるでしょう。なお、開示請求の手続は、下記リンク先ページを参照してください。
相続財産に投資信託がある場合の手続の流れ
被相続人が投資信託で投資をしていた場合、一般的には以下のような流れで相続手続を進めていきます。
- 証券会社や信託銀行に連絡して必要書類の取り寄せや口座の照会を行う
- (共同相続の場合)共同相続人間で遺産分割を行う
- 証券会社や信託銀行に書類を提出して、口座の変更や振替を行う
証券会社などへの連絡
投資信託が存在することが判明したら、取引先の証券会社や信託銀行など金融機関に連絡し、投資家本人が亡くなったことを伝え、相続のために必要な手続や書類を確認し、手続に必要となる書類を送ってもらいます。
一般的には、連絡後、証券会社から取引口座の調査依頼書が送られてきます。
依頼書に必要事項を記載して、以下の書類と一緒に返送すると、証券会社で、具体的な取引口座などを調査して教えてもらえます。
- 被相続人の戸籍謄本(死亡が確認できるもの)
- 依頼者(相続人)の戸籍謄本(相続人であることが確認できるもの)
- 依頼者(相続人)の身分証明書コピー
なお、具体的な手続は、金融機関ごとに異なる場合があるため、必ず事前に問い合わせましょう。
相続人が一人の場合(単独相続)
相続人が一人であれば、依頼書の提出とあわせて、そのまま相続手続を行います。
具体的には、金融機関から相続手続に必要な書類を送ってもらい、必要事項を記事した上で所定の書類と一緒に返送します。
依頼書提出から相続手続まで一度に行う場合は、以下の書類を提出するのが一般的です。
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の身分証明書コピー
- 相続人の印鑑証明書
投資信託を相続する場合、被相続人の取引口座をそのまま名義変更することはできず、新たに相続人名義の口座を開設した上で、そこに投資信託を移すのが通常です。
そのため、被相続人が取引していた金融機関で相続人自身の口座を開設することになります。口座開設手続のための書類も、相続手続のための書類と一緒に送られてくると思います。
相続人が複数人いる場合(共同相続)
前記のとおり、相続人が複数人いる場合(共同相続)は、遺産分割をして、投資信託を誰がどの程度の割合で受け継ぐのかを確定させなければいけません。
遺産分割をした上で、投資信託を相続した相続人がそれぞれ金融機関で相続手続を行うことになります。投資信託の価額の評価は、遺産分割時を基準とするのが一般的です。
共同相続の場合は、以下のような書類を金融機関に提出することになるでしょう。
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 申請者(相続人)の身分証明書コピー
- 申請者(相続人)の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(調停の場合は調停調書、審判の場合は審判書と確定証明書)
あらかじめ必要書類は、金融機関に確認しておきましょう。
相続税の申告・納税
投資信託を相続した場合、相続税の申告や納税が必要です。相続税の納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った時から10か月です。
もし遺産分割が終わっていない場合は、いったん法定相続分で計算した金額を申告・納付して、遺産分割後に更正や修正申告をすることになります。
相続税の申告手続や金額計算は簡単ではないので、税理士や税務署に相談して進めた方が良いでしょう。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
民法と資格試験
民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。
そのため、例えば、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。
これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。
とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
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参考書籍
本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。
逐条解説 改正相続法
著者:堂薗幹一郎など 出版:商事法務
民法改正に対応した逐条解説書。相続を扱う実務家向けですが、持っていると何かと便利です。立法担当者や現役裁判官による著書であるため、内容に信頼性があります。
資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
民法(全)(第3版補訂版)
著者:潮見佳男 出版:有斐閣
1冊で民法総則から家族法まで収録されています。基本書というより入門書に近いでしょう。民法全体を把握するのにはちょうど良い本です。
民法VI 親族・相続 (LEGAL QUEST)第8版
著者:前田陽一ほか 出版:有斐閣
家族法全体の概説書。条文・判例から書かれているので、学習の早い段階から利用できます。情報量もあるので、資格試験の基本書として十分でしょう。
親族・相続(伊藤真試験対策講座12)第4版
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。民法は範囲が膨大なので、学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。


